「厳しい場面を経験しないと育たない」若手育成と勝利を目指す西武・辻監督の指針

西武・辻発彦監督【写真:荒川祐史】

1点を追う7回2死満塁で山田に賭けるも凡退

■オリックス 6-3 西武(3日・メットライフ)

故障者続出で、西武・辻発彦監督の苦渋の采配が続いている。3日に本拠地メットライフドームで行われたオリックス戦に3-6で敗れ、5位に後退した。

難しい判断を迫られる場面がいくつかあった。3点を追う7回の攻撃。栗山、スパンジェンバーグの連続適時打で1点差に迫り、なおも2死満塁。相手先発の宮城を降板させ、2番手として右サイドスローの比嘉がマウンドに上がった。ここで打順は「9番・二塁」でスタメン出場していた山田遥楓内野手。右打席に入る時点で今季打率.226(53打数12安打)。ベンチには左の鈴木将平外野手、川越誠司外野手も残っていた。

それでも辻監督は山田をそのまま打席に送った。比嘉の外角の変化球を見極め、カウント3-1となる局面もあったが、最後は3-2から低めの142キロ速球に差し込まれ、遊ゴロに倒れたのだった。指揮官は試合後のオンライン会見で、この采配について聞かれると、6~7秒沈黙し、「迷いました」と明かした。そして「山田も打撃の調子はいいからね。なんとかしてくれそうな気がしていた。よくカウント3-2まで持っていってくれたけれど、そこからだよ! 厳しいコースに来たらファウルで粘って、四球を選ぶなり……。ヒットが出れば一番良かったけれどね」と続け、「ああいう場面を経験しないと、選手は育たないって! 山田だってレギュラーでやっているんだから。全て結果論だから」と語気を強めた。

かつて辻監督自身が長くレギュラーを張った西武の二塁手は今季、外崎修汰内野手が死球を受けて左腓骨を骨折。代わりに出た山野辺翔内野手も、ヘッドスライディングした際に左手親指を痛め出場選手登録を抹消された。4月10日以降の19試合中17試合で、山田が先発している。7年目の24歳で、1軍出場は一昨年4試合、昨年8試合に過ぎなかった山田にとって千載一遇のチャンス。守備中は1球1球大声を張り上げて投手を鼓舞している。ここぞの場面で山田に賭けた辻監督の判断にも理はあった。

5回無失点のダーモディから宮川への継投も裏目に出た

継投もしかり。0-0で迎えた6回の守備。この日が来日初登板・初先発で、5回まで89球5安打3四球無失点に封じていたマット・ダーモディ投手を諦め、2年目・25歳の宮川哲投手につないだ。宮川は先頭の中川、続くジョーンズに連打された挙句、頓宮に右翼席へ痛恨の3ランを浴びた。

「なんかねぇ……もう1つ自信がないのかな。あいつらしくない。普段はもっときっぷのいいやつなんだけど、勢いを感じなかった」と首をひねった辻監督。「これも試練。こういう場面で抑えてこそ、次のステージがある。乗り越えていかないと」と奮起を促した。

ダーモディはメジャーで通算29試合に登板しているが、全てリリーフ。来日1年目の今季、いきなりコロナ禍で来日が遅れ、ファームで2度先発したが、6回87球が最多だった。ここが潮時と見たのも無理はなかった。

この日、隣接するカーミニークフィールドで行われたイースタン・楽天戦では、左脚を痛めて離脱中の山川穂高内野手が「4番・一塁」、腰痛を訴えていた木村文紀外野手も「3番・右翼」で出場し、そろって本塁打を放った。主力が徐々に復帰してくれば、育成と勝利の両方を求められている辻監督にのしかかる重圧も、少しは軽減されるはずだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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