インド女性の地位向上目指し 県内の2人がビジネス構想

インドでの下着ビジネスを構想する(左から)江副さんとリコーの内海さん、綿石さん=横浜市内

 大手企業による支援制度を活用し、インドで女性用の下着ビジネスを構想する2人の日本人女性がいる。インドの農村部では、男性が販売する店でサイズも合わず味気ないデザインの下着を購入する女性が多い。下着作りの仕事を創出して女性の自立や地位向上につなげ、おしゃれを楽しんでもらいたいと考えた。2人は、新型コロナウイルス禍で当初計画の見直しを迫られながらも、実現に向け準備を進めている。

 海老名市在住の江副亮子さん(38)がリコー社員時代の2010年、仕事で同国北部ビハール州の農村部を訪れたことが始まりだった。女性たちは色鮮やかな衣装を身にまとう一方、下着は生活必需品の一つとして男性従業員のいる店で扱われ、好みのデザインやサイズを選ぶ状況とは程遠い実態を知った。同時に、女性が働きたくても働く機会がない「男女格差」を目の当たりにした。

 その後、家庭の事情により、12年に退社し渡米した江副さん。「インドで下着作りをしたい」との思いを募らせていた時に知り合ったのが、リコーの駐在員として米国にいた綿石早希さん(35)=横浜市=だった。

 日本に戻った2人は19年、リコーの社内起業家とスタートアップ企業を支援するプログラム「TRIBUS(トライバス)」に応募。インドでの調査やテスト販売など精力的に活動した結果をアピールし、応募総数214件の中から最終選考に残り、支援が決まった。

 下着のブランドは、家に幸福を招くとされるインド文様「ランゴリ」と「ランジェリー」を掛け合わせ、「Rangorie(ランゴリー)」と名付けた。インド柄をあしらった吸湿・速乾性の優れた下着作りに向け、本格的に始動しようとした矢先に、コロナ禍に見舞われた。

 自由に渡航できない状況を受け、2人は当初計画を変更。まずは日本で生産し、日本人向けに下着を販売することにした。今春実施したクラウドファンディング(CF)では、同国の伝統衣装「サリー」をイメージしたものや、自宅でゆったり過ごせるブラジャーを販売。非政府組織(NGO)から縫製指導を受けた農村部の女性らが手作りしたハンカチをリターン品(お返しの品)として提供した。CFには多くの反響があり、目標額50万円に対し約164万円の資金が集まったという。

 「最初に出てきたハンカチのサンプルは糸が飛んでいたり、端まで縫えていなかったり」と苦笑する江副さん。だが、ネットを通じリモートで丁寧に指示すると、次回は改善され、現地女性の仕事に対する意識の変化を感じ取った。

 最終的に目指すのは、集めた資金で専用機材を導入し、農村部の女性と下着作りをすること。リコーは2年を目安に事業化を判断する方針で、2人はその間にインド進出の機会を探る。いかに商品の品質を高めるかが、今後の課題だ。

 江副さんは「農村部の女性が自分の可能性を試せるチャンスをつくりたい」、綿石さんは「ランゴリーを通じ、女性を解放する。まだ小さな一歩だが、着実にステップを重ねたい」と意気込む。2人をサポートする同社イノベーション本部戦略統括センター戦略推進室の内海知子さん(43)は「今は事業化の検証段階だが、何かしらの形にしたい」と話している。

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