自走型ロープウエーなら渋滞知らず? 都内ベンチャー、小田原で走行試験「25年に実用化を」 

新たに導入を目指す新交通システム「Zippar」(Zip Infrastructure提供)

 都市部での新たな交通システムを目指し、大学発ベンチャー企業による電動自走型ロープウエーの走行試験が小田原市内で続けられている。山間部に多い従来のロープウエーでは困難なカーブや分岐も可能で、モノレールに比べると建設コストは5分の1ほど。1時間で最大3千人の輸送をすることができ、都市部での交通渋滞解消に向けて2025年の実用化を目指している。

 4月、同市内の山中で行われたメディア向け試乗会。森の中に張られたワイヤ上を1人乗りのゴンドラがゆっくりと滑走する。ノートパソコンから無線で送られたプログラムで運転を制御。実際に記者が乗ってみると大きく揺れることもなく、モーター駆動音も静かで快適な空中散歩だった。

 「Zippar(ジッパー)」と名付けられた自走型ロープウエーを開発しているのは社員わずか8人のベンチャー企業「Zip Infrastructure」(東京都)。須知高匡社長(23)が慶応大学在学中の18年に設立した。

 ジッパーの原点は須知社長が大学時代に研究していた宇宙エレベーター。従来のロープウエーはゴンドラ自体に動力は無く、ワイヤを引っ張ることで走る仕組みだが、宇宙エレベーターはゴンドラが空に向かって自走する構想だ。

 「研究を社会へ実装し、誰もやっていないことをやりたい」。着目したのは都市部で慢性化する交通渋滞。渋滞と無縁の空の上を走り、待ち時間も少ないのが強みだ。開発中のゴンドラは最大12人乗りで、須知社長は「12秒に1台の高い頻度で運行ができる。1時間600~千人を輸送するバス路線をジッパーで置き換えていける」と見込む。

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