移住して夫婦で起業!北海道を支える“よそ者”の力

けいナビ

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今回のテーマは移住者たちの起業。北海道外から北海道に移住して起業した夫婦の挑戦を紹介する。

親の困りごとから“理想のおやつ”づくり

2016年に東京からやってきた萩原さん一家。ニセコで短期間暮らしたことがきっかけで、北海道への移住を決めた。今は札幌で生活している。

去年から、ある商品の販売を始めた。娘の2人が食べているのは、「Pocco(ぽっこ)」というアイス。萩原さんが夫婦で会社を立ち上げ、アプリを通じて販売している。

移住後はリモートワークで東京の仕事を続けたり、転職先を探したりもしたが、次第に夫婦で一緒に働きたいと考えるようになった。夫の学さんは「東京とかで仕事をしていると、ほとんど夫婦で一緒にいられない。それなら一緒に仕事をすることが一番一緒にいられる方法だと思った。農家のように夫婦で仕事をするスタイルは良いなと思っていた」と話す。

夫の学さんは過去に外資系のゴールドマン・サックス証券に勤めており、起業の経験もある。美緒さんはレシピサイトのクックパッド出身。美緒さんのアイデアを元に学さんが財務管理やアプリの開発を担当する、二人三脚の経営だ。

このアイスが生まれたきっかけは、美緒さんが東京で働いていた頃から感じていた悩みだ。美緒さんは「子どもを保育園に迎えに行き、帰って夕食を作る30分くらいの間が大変だった。子どもがお腹がすいたと騒いでしまい、つい味の濃いお菓子を与えてしまう。そうすると夕食を食べなくなってしまった」と話す。

このアイスは、わずか20グラム。これだけでは満腹にはならず、子どもが夕食を拒むこともない。自らの経験を生かし、健康にもよく、かつ喜んでもらえる理想のおやつを作ろうと考えた。

原料は、北海道産の野菜や果物を使うことにこだわる。取引先の一つ、余市の加工会社「北王よいち」。この会社は、余市産のフルーツ果汁を100%使った高価格のジュースを東京の百貨店などに卸している。

元々このジュースのファンだったという萩原さんは、この会社から品質にこだわったリンゴとブドウのペーストを仕入れている。今や、飲食店の休業などで売り先を失った農家にとって貴重な出荷先。余市にとっても、大事な存在だ。

北王よいちの小田会長は「果物で余市ブランドの知名度を上げようとしても物流的に量が足りず、安定的に供給できない。それだと余市リンゴの知名度は上がらないので、加工することで一年中供給ができる」と話す。

品質はもちろん、商品の届け方にも工夫が。母親目線の「便利さ」にこだわった。

薄く、ポスト投函できる箱で届ける仕組みにした。常温で届き、凍らせるとアイスになる。反応は上々で、販売から1カ月で品切れに。今後は外部のスタッフも増やし、事業を広げる計画だ。

自家製ハーブが町の特産に!?

十勝の陸別町。真冬には氷点下30度を下回ることもある、「日本一寒い町」として知られている。

道の駅でことし3月から販売されているのが、陸別町産のトドマツとアカエゾマツから抽出したアロマオイル。間伐で廃棄されるマツの枝葉から抽出したもので、香りにはリラックス効果などがあるという。

この商品を作ったのは、4年前に陸別に移住してきた日向さん夫婦。2人は北海道大学の薬学部出身で、卒業後は塩野義製薬に就職。大阪で新薬などの研究をしていたところ、北海道移住フェアで陸別と出会った。

陸別は84%が森林で、基幹産業は林業と酪農。町は、農産物でも特産を作ろうと、ハーブや、漢方などに使う薬用植物の産業化を目指していた。

2人は地域おこし協力隊の制度を使って移住。夫の優さんは薬用植物を使ったお茶やお菓子の商品開発を、妻の美紀枝さんは観光や地場産品の情報発信を行った。任期が終わった後も陸別に住み続けようと、ことし2月に薬用植物を使った商品を作る「種を育てる研究所(タネラボ)」を立ち上げた。

日向さんは町内の農家から畑を借り、去年から薬用植物を栽培している。その数、20種類から30種類。試験的に始めたため、収穫などの作業はほとんど手作業だったという。ことしは面積も広げる予定だ。

こうして自ら栽培した「薬用植物」を使い、食品や化粧品の開発に取り組む。すでにハーブティーやハンドクリームなど、いくつかの試作品ができている。

商品開発の経験はこれまでなかったが、薬学部や製薬会社での経験が事業に生かされているという。優さんは「薬効があるものを商品化するときに、しっかり調べないと薬事法違反など法令違反になってしまうことがある」と話す。2人は商品のコンセプトやほしい効能を先に決め、それに適した植物を探して栽培しているのだという。

町内ではまだ、薬用植物を育てる農家はほとんどおらず、加工も北見市で行っている。今はほとんどが手作りだが、ゆくゆくは陸別全体を巻き込んだ産業にしたいと考えている。

北海道での起業 移住者はどう見る?

二組とも、北海道で起業して良かったと口をそろえている。東京から移住し、札幌で子ども向けのアイスを販売する萩原夫婦。ベンチャー企業出身の2人は、北海道の環境に大きなチャンスを感じている。

学さんは「北海道で良かったのは、商品開発にあたり食材の産地に近いところ。環境は十分すぎるほどあると思うので、あとはアイデアとやる気のある人がやろうと思うかどうか」と話す。

美緒さんは「東京と比較すると、いろいろなところで解決できそうな余地がたくさんある。余市の農家さんと話す中でもすごい困ってることがある。課題がたくさんあるということはチャンスもいっぱいあるということだと思う」と話す。

一方、薬学部や製薬会社での経験を生かし、十勝の陸別町で薬用植物を生かした商品づくりに取り組む日向さん夫婦。人とのつながりを持ちやすいことが、小さな町での起業の良さだという。

優さんは「町内の人はトドマツやアカエゾマツの香りの良さに気付かない方が結構多い。でも実際を販売してみると町内の人が土産として町外に住んでる知り合いや親戚に町の特産品として送るなど、大切に扱ってくれる」と話す。

美紀枝さんは「起業すると考えた時も、小さい町の方が町の人がどう思ってるかなどのリアクションが返ってきやすい。小さな町での起業にすごくピンときた」と話す。

外から来た人だからこそ気づく地域の魅力。そうしたアイデアやエネルギーが地域にとって力になる。
(2021年5月8日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)