緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の効果は希薄化 業務プロセス再設計と体験により変化に前向きなテレワーカー増大を

コロナ禍により人々の行動が制限されるようになって一年以上が過ぎた。人々の意識や価値観は、この一年どのような変遷をたどっているのだろうか。日本生産性本部は、組織で働く雇用者を対象に、所属組織に対する信頼度や雇用・働き方に関する考え方などについて、継続的にアンケートによる意識調査を実施している。2020年5月の第一回以降、7月、10月、2021年1月に続いて五回目となる今回の調査は、一部地域にまん延防止等重点措置が適用された直後の4月12日から13日、日本の企業や団体に雇用されている20歳以上の1,100 名を対象とした。

 4月25日から東京都をはじめとする4都府県に三度目の緊急事態宣言が発出されたが、駅や繁華街の人出は微減にとどまり、昨年4月の緊急事態宣言時ほどの緊張感はなくなったようにみえる。感染不安と不要不急の外出自粛について、「かなり不安を感じている」割合は1月調査時点に比べると全ての世代で減少(同レポート図5参照)し、また、不要・不急の外出を「できるだけ避けるようにしている」割合も減少した(同レポート図8参照)。

図5 自身がコロナに感染する不安
図8 不要・不急の外出

1月調査から今回の調査の間には、二度目の緊急事態宣言の発出やまん延防止等重点措置の適用があったにもかかわらず、人々の「コロナ慣れ」が進んでいることがデータ上でも明らかになった形だ。さらに、政府(国)を「信頼していない」と考える割合は73.2%と政府への不信感は前回調査から引き続き高い水準となっており、措置・宣言によって行動変容を促すことは一層難しさを増していることがうかがえる。

 変異株の出現やワクチン接種の遅れなど新型コロナウイルス禍の収束はまだまだ見通せない状況が続く。行政にさらなる感染症対策の拡充を期待する一方で、企業として取り組みを進めたいのがテレワークだ。今回の調査では、テレワーク実施率は1月調査の19.8%から16.5%に低下し、昨年の7月調査以降2割の壁を越えられない状態にある(過去の調査結果一覧はこちら)。この2割の壁を打破するにはどうすればいいか。調査結果レポートでは、「今の仕事の進め方をそのままテレワークに落とし込むのではなく、テレワークを前提とした業務遂行プロセスの再設計に取り組むべき」と指摘する。

 今回の調査では、テレワーク経験者の方がテレワーク未経験者よりコロナ収束後の未来に対して変化の可能性を肯定する傾向が強いことも明らかになった(同レポート図55参照)。いま、社会では「コロナ慣れ」が進み、コロナ禍前へ回帰する動きが見え始めているが、新型コロナウイルスで浮き彫りになった課題に向き合うことは避けられない。新しい働き方を部分的にでも導入しながら、次の未来を創る一歩を期待したい。

図55 テレワーク有無別・変化は起こり得るか(4月調査)

 このほか、メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用、就業希望年齢なども調査した。調査の詳細は調査結果レポートに掲載されている。

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