B29搭乗兵の慰霊祭営む 田辺市龍神村に墜落

慰霊碑前で読経する松本周和住職(5日、和歌山県田辺市龍神村殿原で)

 和歌山県田辺市龍神村の殿原区(深瀬武文区長)は5日、太平洋戦争末期に区内に墜落した米軍爆撃機B29搭乗兵の慰霊祭を営んだ。77回目の今年も参列者が犠牲者の冥福と世界平和を祈った。東京・横田基地を拠点に活動している米国空軍太平洋音楽隊員も参列し、演奏や歌で追悼した。

 殿原に飛来したB29は、1945年5月5日午前11時ごろ、日本の戦闘機による攻撃で撃墜され、搭乗していた11人のうち7人が死亡。パラシュートで脱出した4人のうち3人が処刑され、1人は不明とされている。

 墜落の翌月、地元の住民らによって仏式の供養が営まれ、以降、慰霊祭を続けている。現在、惣大明神そばに「連合軍戦没アメリカ将士之碑」があり、毎年5月5日に僧侶とカトリックの神父により慰霊祭を営んでいる。新型コロナウイルス感染防止の観点から、今年は昨年に続き規模を縮小し、参列者は10人で営んだ。

 最初に大応寺(龍神村東)の松本周和住職(72)が読経して参列者が焼香。しばらく時を置いてカトリック新宮教会のジョー・ブロデリック神父(77)が碑の前で世界と日本の平和を祈った。

 米軍音楽隊の上級空兵、アリシア・キャンセルさん(33)が米国と日本の国歌を英語と日本語で独唱。技能軍曹のデーブ・ウクターさん(37)のトランペットの追悼演奏もあった。アリシアさんは「亡くなった兵士に敬意を表し、毎年地域の人が慰霊祭をしてくれていることに感謝して歌った」、デーブさんは「気持ちを込めてトランペットを吹いた」と話した。

 2人は、小学生の頃に墜落を目撃し、墜落の史実を調査してきた地元の郷土史家、古久保健さん(83)から、搭乗兵の写真を見せてもらったり、古久保さんが搭乗兵の親族と交流していることを聞いたりした。

 古久保さんは「地域の行事として慰霊祭が定着している。始めた先人に感謝したい。戦争のない武器を持たない平和な時代を築くベースになってきたと感じる。慰霊祭はこれからも継続されるだろう」と話した。

 古久保さんの活動を引き継いでいる3人のうちの1人、五味一平さん(43)は「次の世代に引き継ごうと語り部の活動を始めた。継続して平和と戦争のない世界を祈りたい」と語った。

 深瀬区長(67)は「墜落のことや、平和を願う昔からの地元の思いを、これからも伝えていかなくてはいけない。100回を目標に何とか慰霊祭を続けていきたい」と述べた。

米国空軍太平洋音楽隊員に搭乗兵の写真を見せ、遺族との交流について話す古久保健さん(右)

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