手負いの西武“山賊打線”が山本由伸を攻略したワケ ベテランの献身と得意の足攻

西武・中村剛也【写真:荒川祐史】

辻監督は中村を称賛「チャンスで自制して走者を返す打撃をしてくれている」

■西武 6ー2 オリックス(5日・メットライフ)

西武は5日、本拠地・メットライフドームで行われたオリックス戦で、相手先発の山本由伸投手を攻略し6-2で快勝。首位にもわずか3ゲーム差の4位に浮上した。山本はプロ5年目で自己ワーストの10安打を浴び、7回途中で5失点。山川穂高内野手、外崎修汰内野手ら主力を故障で欠く西武打線が、日本を代表する右腕を倒せたのはなぜか。

「1イニングに2点や3点も取れる相手ではない。さすがのベテランのタイムリーで、前半に1点ずつ取れたのが大きかった」。辻発彦監督がそう振り返ったように、栗山巧外野手と中村剛也内野手のチーム野手最年長コンビが、いぶし銀の働きを見せた。

初回1死一、三塁では、5番の栗山が真ん中付近に来た153キロの速球を見逃さず、中前へはじき返して先制。栗山は3試合連続のタイムリーとなった。3回1死三塁では、4番に座る中村だ。初球の内角低めの152キロ速球を、逆方向の右前へ運び追加点を奪った。

「あれだけのホームランバッターなんだけど、ここのところ目に余るくらい、チャンスでは自制して走者を返す打撃をしてくれている。ありがたい」と辻監督。現役最多の通算426本塁打を誇る中村の、献身的な打撃を称えた。中村は本塁打こそ今季2本にとどまっているが、5月に入ってから月間打率.500(12打数6安打)と好調。4月20日時点で1割台に低迷していた今季打率を.278(5日現在)に押し上げている。

山川、木村は1軍復帰へスタンバイ

また、両リーグを通じて最多のチーム34盗塁をマークしている走力も、西武の強みである。5回には1死から、源田壮亮内野手が意表を突くバント安打で出塁。2死後、中村のカウント0-2からの3球目に二盗を決め、山本を揺さぶった。中村はすかさず、3-1から5球目のカットボールをとらえ、左前へこの日2本目の適時打。7回には1死から、途中出場の金子侑司外野手の右前打と源田の適時三塁打で加点し、とうとう山本をマウンドから引きずり下ろした。ベテランの勝負強さと得意の足攻が光った。

2軍では、左脚を痛めて離脱中の山川と、腰を痛めていた右翼レギュラーの木村文紀外野手が、最近のイースタン戦3試合でともに2本塁打ずつ。1軍復帰へ向けてスタンバイしているが、辻監督は「そろそろ上げたいが、本当にちゃんと行けるかどうか、これから確認して決めます」と思いのほか慎重な姿勢を示した。

チームトップタイの4本塁打を放っている愛斗外野手、二塁で好守備を連発する山田遥楓内野手ら、代役で出場している若手にも成長がうかがえる。これだけ主力を欠いていても、それなりの戦い方はある――。辻監督の態度からそんな自信が垣間見えた。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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