走って、跳んで、登って。
己の身体能力とテクニックを駆使して、アクロバティックに街中を駆けまわる「パルクール」。
もともとはフランスの軍事訓練から発展したスポーツ(移動術)とのことですが、現在はトレーニングやパフォーマンス、アート、ライフスタイルなど、トレイサーと呼ばれる実践者たちが、それぞれのスタイルでパルクールに取り組んでいます。
そのパルクールと日本の伝統文化を融合したのが「忍者パルクール」。昨年末から今年2月にかけて、世界大会も開催されました。
忍者パルクール2021オンライン世界大会のハイライト。
こちらは2018年に金沢城で開催された全国大会の様子。
その動きは、まさに現代の忍者!
モチーフになっているのは、加賀藩時代に実在したといわれる加賀忍者。伝統的な建造物や歴史ある街並みを縦横無尽に走り抜けていく姿は、まさに現代の忍者といった印象です。
そんな金沢発祥のエクストリームスポーツを支えるのは地元のトレイサーたち。今回はパルクールに関するさまざまな疑問を、石川や愛知などを拠点に活動するトレイサーの皆さんにぶつけてみました。
ーーどういうきっかけでパルクールを始めたんですか?
武居さん:中学生のときにYoutubeで知りました。
KENさん:俺も。みんな大体そんな感じだよね。
岡根さん:パルクール講座を見ながら、宙返りの練習とかしてましたね。
志賀さん:でも、ひとりでやっててもつまらないから、SNSでほかのトレイサーとつながって、遠征をしながらスキルを磨いていった感じですね。
ーーやっぱり若いうちに始めないと無理ですかね…。
志賀さん:そんなことないですよ。30〜40代で始める人もいますし。
KENさん:ある程度の運動神経は必要だけど、何歳からでもチャレンジできるスポーツだと思います。
ーーどういうところで練習するんですか?
岡根さん:公園とか砂浜が多いですね。
武居さん:砂浜だと怪我しにくいから、安心して大技に挑戦できるんですよね。
KENさん:東京や大阪みたいに専用の練習場(スタジオ)があればいいんだけどね。
志賀さん:忍者パルクールの大会をきっかけに応援してくれる人も増えているし、そのうち金沢にもスタジオができるかも。
KENさん:たしかに、そうなるといいね。
KENさんはYouTuber「SYURIKEN BOY」としても活動。遅刻を回避するためにバイト先までダッシュするなど、おもしろさを追求したパルクール動画を公開している。
恐怖心を克服した先にあるもの。
ーーパルクールのどんなところが楽しいですか?
志賀さん:自分自身でかかげた目標を、ひとつずつクリアしていく。
岡根さん:パルクールの醍醐味ですよね。
志賀さん:この技をやりたい!と思って、ひたすら練習して、ようやくできたときの達成感ね。
KENさん:どうしたらキレイに、正確に、素早くできるか、研究するのも楽しいよね。
武居さん:自分の中にある恐怖心を克服して技を成功させると、人間的に成長した気分になります。
志賀さん:うんうん。たまに「怖いものもの知らず」みたいに言われるけど、怖いものは怖いから。
KENさん:恐怖心がないと、なにが危険なのか判断できず、ケガしてしまうからね。
志賀さん:「弱い自分と理想の自分のどちらとも向き合い、苦手を克服し、強くなるための目標を立て、それに向かって試行錯誤する」というのがパルクールの哲学。
武居さん:自分の限界を知ったうえで、いかにリスクコントロールできるか。パルクールには冷静な判断力も必要だと思います。
ーー観戦するときの楽しみ方は?
志賀さん:パルクールは世界中で競技されているので、その土地の環境や文化がダイレクトに動きに現れます。
岡根さん:そういった国ごとのスタイルを見るのも楽しいですね。
KENさん:ダンサー出身だったり元アスリートだったり、トレイサーの個性もスタイルに現れるよね。
武居さん:フリースタイルはとくにそう。フィギュアスケートのように豪快な技を繰り出す人もいれば、芸術性を重視する人もいる。
岡根さん:トレイサーの特徴を探しながら見るのも、面白いかもですね。
海外ではダイエットや運動不足解消のメソッドとして、さまざまな年齢層の人たちに実践されているパルクール。
自分の身さえひとつあれば、道具もなにもいらず。みなさんも忍者になった気持ちで、普段のライフスタイルに取り入れてみてはいかがでしょうか。
(取材・文/ヨシヲカダイスケ、撮影/林 賢一郎)