海釣り「浮きの匠」中国山地に ウインナーに似た独特の形状、海外からも注文

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木の切り出しから浮力の調整、塗装まで1本1本の全工程を一人で手掛ける正田宗雄さん=島根県邑南町中野

 海に面していない中国山地の高原地帯で、海釣り用の浮きを手作りする職人がいる。島根県邑南町中野の正田宗雄さん(70)で、かつて釣具店を営んでいた頃に頼まれて作り始め30年を超す。原料の木材や形を工夫した優れ物で、今や全国に愛用者がおり、海外からも注文が舞い込む。原料の木の切り出しから塗装まで全てを一人で手掛け「ほかにはない浮きを作っている」と自信を見せる。 

 同県川本町出身。幼い頃から釣りに親しみ、1983年から同町内で釣具店を営んだ。市販の浮きに飽き足らない常連客に頼まれ、もともと材木屋で木が手に入ることから90年ごろから浮きを作り始めた。

 5年以上乾燥させた桜の木を削って作る浮きは自らの名前を取って「宗(むね)うき」と名付けた。円すい形でなく、ウインナーに似た独特の形状で感度が良く、着水音が小さいのが特徴。さらに、何度も水に漬けて調整し、量産品とは違う浮力の正確性を実現した。色合いや重量など、バリエーション豊富に展開しているのも人気だ。

 口コミなどで広まり、瀬戸内海で釣りに励む広島県の愛好家を中心に、北は新潟県から、南は沖縄県までの釣り人が求める。台湾からも注文がある。釣り具メーカーが主催するチヌ釣りの全国大会優勝者らも宗うきを愛用し、正田さんと交流があるという。

 広島、岡山両県にある釣具店3店に卸すほかは、ネット通販のみ。大手釣具店から「扱いたい」と請われたこともあるが、正田さん一人で大量生産はできず、断った。

 15年ほど前に店を閉じ、10年ほど前には事故で脊髄を痛めて歩けなくなり、週2回はリハビリ通院する生活だが、浮きへの思いは尽きない。

 「自分の浮きで『よく釣れた』と言ってもらえるのがうれしいし、いい浮きができた時は気持ちがいい。元気なうちは作り続けたい」と、こだわりの浮きを生み出し続けている。