五輪テストマラソンで〝現実〟露呈 札幌在住の専門家が警鐘「政府の危機管理甘い」

政府は後手後手だ

この国のコロナ対応は迷走するばかりだ。北海道では5日午前、東京五輪テスト大会となる「北海道・札幌マラソンフェスティバル2021」が開催。本番を見据えたコロナ対策が施され、沿道での応援の自粛も呼びかけられたが、実際には多くの観客が集まる場面も見られた。

しかもマラソン終了後、新型コロナウイルス感染拡大中の札幌市を対象に「まん延防止等重点措置」の適用を国に要請することを決定。あまりの手際の良さに札幌市民からは「公道を危険にさらし、終わった直後に要請とか頭おかしい」「このタイミングの要請決定って完全に五輪ありき」と不満の声が上がった。

札幌市在住で、防災・危機管理アドバイザーであり医学博士の古本尚樹氏も「現地では、この時期に開催することに疑問を抱く人がかなりいた」と証言。新型コロナ対策よりも五輪を優先させる政府の取り組みに対しては、こう指摘する。

「今回のテスト大会でもそうだが、イベント会場で十分な感染対策を行っていても、そこに行くまでの過程で感染リスクが高まる可能性がある。例えば、同じイベントに向かう人で満員になった電車や、会場の出入り口付近で混雑した場合など。政府の危機管理が甘いと思う」

これまで発令と解除を繰り返してきた緊急事態宣言だが、果たして今回は、延長することで感染拡大を抑え込むことはできるのだろうか。

古本氏は「現在、日本のワクチンの接種率は人口の1%に満たない。これは非常に遅すぎる。経済協力開発機構(OECD)に加盟している37か国の中でダントツの最下位なんです」と言う。日本は先進国の中での“ワクチン最貧国”となっているわけだ。

「こうした現状が感染を抑止できない理由でもあり、政府の政策の失敗以外の何物でもない。ワクチンは接種しても3か月から半年くらいたたないと効いてこない。だからこそ、接種のスピードを上げて多くの人が接種できるようなシステムを作らなくてはいけない。変異ウイルスも多様化している。このままでは、今後国内の感染者数が爆発的に増加する可能性も十分に考えられる」(同)

政府はこの状況をどう受け止めるか。

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