“五輪中止署名”発起人・宇都宮健児氏が独白「五輪にあてる財源を生活困窮者に」

取材に応じた宇都宮健児氏

弁護士の宇都宮健児氏(74)が5日正午から開始した東京五輪“中止署名活動”の勢いが止まらない! 同氏は5日正午から署名サイト「change.org」で「東京五輪・パラリンピックの開催中止」を呼び掛けると、7日午後5時時点で21万筆を集めた。多くの海外メディアも注目する中、宇都宮氏が京中を告白した。

――今回の署名活動を行ったきっかけは

宇都宮氏(以下宇都宮) IOC(国際オリンピック委員会)やIPC(国際パラリンピック委員会)に日本国民の思いを伝える必要があると思った。いろいろな世論調査はあるが、それを形にする1つの運動として署名活動があるのかなと思い、立ち上げた。第1次段階として来週末くらいにまとめて東京都に提出しようと思っている。もちろん、それ以降も署名活動は続ける。

――新型コロナ感染拡大で東京五輪・パラリンピックの開催を疑問視する声も出ている

宇都宮 多くの国民が感じていることだとは思うが、世論調査でも7割が再延期か中止を求めているし、特に大阪府を中心に(新型コロナウイルスの)感染者が増えて、医療は本当にひっ迫して在宅で亡くなる人も出てきている。この波が東京にも広がる可能性があって、東京もこれから感染者が増えていくと思う。全国的に医療がひっ迫して感染者を救うのが大変なときに五輪開催となると、五輪のために1万人くらいのスタッフが必要。また、何十か所もの病院を確保するような要請があるが、医療資源を割く余裕が今の感染状況下にはない。

――ワクチン接種も大きな負担となる

宇都宮 ワクチン接種をやろうと思ったら、さらにスタッフや医療資源が必要。むしろ、こういう(コロナの)感染拡大の中では、国民の命や健康を守るためのコロナ対策に全力を注ぐべき。五輪を開くのは非常に問題があるし、そういう状況下で開いても、国民が心から五輪を歓迎できないと思う。

――生活困窮者の問題もある

宇都宮 ゴールデンウイーク中の5月3日、5日に都内で生活困窮者の支援活動として「大人食堂」を開いた反貧困ネットワークの代表をやっており、私も「大人食堂」に参加した。2日間で約800人が食料支援や生活相談、医療相談に来た。そういう困窮者、仕事や住まいを失った人が続出しているが、そういう人たちへの財政的支援がない。1回目の緊急事態宣言では国民1人あたり10万円の特定給付金が配られたが、その後は全くない。五輪にあてる財源に余裕があるのであれば、生活困窮者への支援とか、休業要請や時短要請を受けた業者への支援に全力を注ぐべきだと思う。

――署名参加者の反応は

宇都宮 反響が大きくてびっくりしている。「こういう署名活動を待っていた」という声や、医療従事者からは「よくやってくれた。現場は疲弊している。本当にありがとうございます」との電話が来た。それから海外メディアも注目していて、五輪・パラリンピック開催時に放映権料を払う米放送局「NBC」も報じていて、AP通信やロイター通信なんかからも取材要請が来ている。海外メディアも日本の動きを注視しているので署名という形で声を伝えることは意味がある。

――弁護士として中止時の賠償金問題はどう見る

宇都宮 日本側から中止を言っても違約金は発生しない。そういう契約になっている。ただ、中止になったらIOCに放映権料やスポンサー料が入らないので、IOCは財政的に厳しい状況に追い込まれる。IOCのメイン収入は放映権料とかだからね。

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