「私たちの中で息子は生きている」大津園児事故、被害者が手記

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横断歩道で、園児らを安全に渡らせる方法を学ぶ保育士たち(7日午後2時ごろ、大津市一里山3丁目)

 大津市での園児ら16人死傷事故から8日で2年となるのを前に、園児の遺族や保護者が報道陣に手記などで思いを寄せた。変わらぬわが子への愛情や事故のない社会への願い、当事者の運転手への思いなどをつづった。

 「あの日から約2年…。寂しい。悲しい。つらい」。わずか2歳で命を奪われた伊藤雅宮(がく)ちゃんの遺族は手記を初めて寄せ、今なお現実を受け止めきれない悲痛な心境をつづった。

 生前、「スイミングに通いたい」と言っていた愛息に「普通に成長していればいろんなことをやらせてあげられたがかなわない」と悔やんだ。「私たちの中で息子は生きている」。お気に入りだった仮面ライダーのベルトなどは大切に残し、今も誕生日やクリスマスにはプレゼントを買い、お姉ちゃんと遊ぶ姿を想像するという。

 一方で、「日常のたわいないことで笑うことがあっても、罪悪感のような思いを胸に隠しながらで、以前のような笑顔になることはもうない」と、事故で一変した生活を明かした。

 事故で左足や骨盤を折るなどして2カ月半入院した女児(5)の保護者は文書で取材に応じた。女児は今も半年に1回程度通院するが、新型コロナウイルス禍で通院もためらう状況で、冬の時期は「足が痛い」とうずくまることもある。駐車場などで手をつながないと「プップ(車)ドンするよ」と話すという。外で遊ばせる際は必要以上に気を使うようになり、大きな園庭のある郊外の保育園への転園を決めた。

 事故後も各地で惨事が後を絶たず、「無責任で危険なドライバーは依然多い。大津市内でも、ひしゃげたガードレールや道路に散らばった車のパーツを目にした瞬間、あの事故は世の中にとり、何の意味があったのだろうかと考えてしまう」とし、「車は使い方を間違えれば凶器と同じ。ハンドルを握るその手が、大切な人を抱きしめるための手であってほしい。いつ、いかなるときも、運転手の誰もが加害者になり得る」と強調した。

 雅宮ちゃんの遺族と女児の保護者は、それぞれ、不起訴処分となった直進車の女性(64)と面談していた。

 雅宮ちゃんの遺族は、「会いに来るのは怖かった」という女性の言葉を人ごとのように感じ、検察審査会への不服申し立てを決意した一番の理由に挙げた。「ブレーキを踏まず息子たちに痛い思いをさせた以上、罪がない人にはできない。残された家族がしてあげられるのは、それぐらいしかない」とした。

 女児の保護者は「謝罪よりも、自分の精神状態に対する同情を誘う言葉が前面に出ているように感じた」と嘆いた。謝罪の手紙もあったが「一般的な定型文で他の被害者家族へも全く同じ文章だと聞き、謝罪の意すらあるのかどうか」と疑問を呈した。

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 滋賀県警大津署は7日、発生現場などで「子どもを守ろう」とドライバーに安全運転を呼び掛け、「一里山ひかり保育園」(一里山2丁目)の保育士らには散歩時の安全指導を行った。野﨑秀喜署長らは現場で黙とうをささげて献花。「事故を決して忘れず安全対策に一層取り組む。ドライバーはハンドルを握る手に責任を持って」と話した。