【NHKマイルC】ゴルフコンペに花を添えた好騎乗 ロジック

武豊騎手の好騎乗でGIを制したロジック

【松浪大樹のあの日、あの時、あのレース=2006年NHKマイルC】

ご指摘があるかもしれませんが、間違ってませんよ。その日は5月8日です。ロジックがNHKマイルCを勝った翌日の月曜日。ですから5月8日でOKなんです。

この日、僕は滋賀県のゴルフ場にいました。橋口弘次郎調教師が主催したゴルフコンペに出場するためで、それは定期的に行われていたコンペではなく、管理するハーツクライの有馬記念&ドバイシーマクラシック優勝記念のサブタイトルが付けられている特別なもの。

参加するだけで様々な厩舎グッズを貰える素晴らしいコンペでありまして、キャップにブルゾン(両腕に刻まれたハーツクライとユートピアは会社に了承を受け、僕が橋口弘師に提供した写真をイラストにしたものです)、そしてタイトリストのボールなどを貰った記憶があります。もちろん、ボールにはドバイ2競走を優勝した趣旨のネーム入り。これだけは誰にも譲れませんし、使うこともできませんね。大切に飾って…まではしてませんけど、ちゃんと保管していますよ。墓まで持っていくつもり。ドバイでの思い出をよみがえらせてくれるとても大切なものですから。

このコンペに花を添えたのが前日のNHKマイルCでした。ドバイの2勝に関しては馬の強さをアピールしていた橋口弘師でしたが、このNHKマイルCに関しては「天才ジョッキーの好騎乗があってこそ」と熱弁してましたね。3番人気での出走ですし、色気がなかったわけ(実際、出走馬最速の上がりタイムをマークした前走のニュージーランドT3着で橋口弘師も手応えを口にしてました)ではありません。しかし、それでも「大きい声で勝てるといえる馬でもないな。ユタカ(武豊)が上手に乗ってくれたら勝ち負けになる」と語っていました。

自他ともに認める橋口フリークの僕でも1番人気だったフサイチリシャールや、前2走で結果を出してなくてもポテンシャルは相当と感じていたキンシャサノキセキのほうが上かなと思っていたんです。それがあの素晴らしいレース運び。序盤は馬群の中にいたはずなのに、コーナーを回るときには、距離ロスのない内ラチ沿いを走っているんですからね。手応えよりも渋いタイプの馬を徐々に加速させ、いつの間にか先に抜け出したファイングレインに併せるところまで来ていた。いや、あの騎乗はホントにすごかった。POG指名馬でもありましたし、相当に興奮した記憶があります。

アグネスタキオンの初年度産駒だったロジックは均整の取れた馬体が印象的な馬。師がPOGの推奨一番手に挙げてくれたのも納得でした。しかし、〝切れ〟という点においてはサンデーサイレンス産駒ほどのものがなく、現役時代で最速上がりをマークしたのは新馬戦と前述したニュージーランドT、そしてこのNHKマイルCの3回のみ。スピードもそこまで豊富だったわけでなく、実際にNHKマイルC以降は15戦して未勝利でした。勝ち負けどころか3着以内に入ることもできなかったんです。古馬になってGⅠ馬となった2着のファイングレイン、3着キンシャサノキセキとは対照的ですよね。

橋口弘師はよく言ってました。「ロジックはユタカの、ザッツザプレンティ(2003年菊花賞)はアンカツの腕だけでGⅠを勝った」。さすがにそれは言い過ぎかもしれませんが、言いたいことはわかります。ちなみに殊勲者である武豊騎手もコンペに参加。「ユタカが来てくれたことでコンペに華が出た。前日に東京でGⅠを勝って、宴会でもしてきたいところだろうになあ。ホントに感謝してる」と橋口弘師。それだけでなく、大型の液晶テレビ(だったと思います)を賞品として提供してくれたんですよね。それが発表されたときの盛り上がりもすごかった! 誰が持って帰ったのかは忘れてしまいましたけど(苦笑)。

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