GW観光客は増えたのに…「旅行した」とおおっぴらに言えない空気、土産物店の利用が低調

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水木しげるロードを散策する観光客。コロナ前には及ばないが昨年の大型連休より人出は大きく増えた=5月3日、境港市本町

 新型コロナウイルス感染拡大が収まらず緊急事態宣言延長が決まる状況の中、大型連休中(4月29日~5月5日)、山陰両県の観光地には同様に緊急事態宣言下の昨年同期より多くの観光客が訪れた。「旅行した」とおおっぴらに言えない空気のためか、土産物店利用は低調なままで観光関係者は複雑な心境。医療関係者は、コロナ禍長期化に伴う気の緩みを警戒する。

 境港市の水木しげるロードには大型連休中、6万1017人の入り込みがあった。コロナ前の2019年同期(約43万6千人)と比べれば1割強しかないが、それでも昨年同期(4389人)の13倍以上。市観光振興課の立花順平係長は「昨年と比べれば大きく増えた」と今後の回復に期待を寄せた。

 悩ましいのは、客足ほどには消費が回復していないことだ。

 鳥取市の鳥取砂丘周辺の観光施設は4万5023人の入り込みがありコロナ前の19年同期の4割程度に回復したが、土産物店の売り上げは1割程度にとどまった。

 土産物販売・飲食店「砂丘フレンド」の山根弘司社長(61)は「『旅行に行った』と言える状況になく、売り上げが上がらない。コロナ禍で客数と売り上げを単純計算できなくなった」と長引く観光業界の苦境を口にした。

 観光客の顔触れや移動手段にも、コロナ前とは違う観光旅行の姿が表れた。

 19万6千人が訪れた出雲市の出雲大社周辺では近場観光を楽しむ島根ナンバーの車が例年より目立った。県外ナンバーのキャンピングカーや大型ワゴン車もあり、他人との接触を避けるため公共交通や宿泊施設を敬遠したことがうかがえた。

 出雲大社前の神門通りを中心に60事業所70店舗でつくる「神門通りおもてなし協同組合」の田辺達也理事長(63)は「予想外に多かったが、安心して訪れているという印象はまだない」と分析する。

 人目をはばかって土産物を買うでもなく、旅の楽しみでもある公共交通や宿泊施設の利用を避けてまでする観光旅行。コロナ禍の中、2度目の大型連休ではそんな傾向が顕著になった。

 島根県医師会の森本紀彦会長は「自粛疲れがある」とコロナ禍長期化の影響をみる。さらに、本来かかりにくい若年層への感染や、感染力が強く重症化の恐れが大きい変異株が広がりつつある現状に触れ、1年前よりリスクが高まったと指摘。「従来と状況が異なることを意識してほしい」と県境をまたぐ移動を控えるなど慎重な行動を念押しした。