“ドS男子”が女子の心をつかんで離さない理由

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鋭い瞳にきりっと濃い眉、そしてくるりとカールした髪。その男は2005年の若者の青春を手の内にした。

人気コミック『花より男子』(集英社)が同名タイトルで実写ドラマ化し、嵐の松本潤がドSでツンデレの人気キャラクター・道明寺司を演じたのだ。

ヒロインの牧野つくしを井上真央が、さらに道明寺とヒロインを奪い合うF4の一員・花沢類を小栗旬が演じている。

当時の私たちにとって、『花より男子』(以下、『花男』/TBS系)での道明寺と類の姿は衝撃だった。

黒を基調に、色香漂うパープルの差し色の衣装できめた道明寺と、柔らかな白を基調とした衣装の類。

対照的な2人が勝ち気なつくしを取り合いあの手この手でアプローチする姿に、翌日の教室は『花男』の話題で持ちきりとなった。クラスの男子ですら道明寺派と類派に分かれていた。

まだ折りたたみ式だった携帯の待ち受け画像に、ドラマのセリフが入った『花男』画像を設定していた思い出は、今も私の胸に刻まれている。

松本がもたらした道明寺という新たな“ドS”王子様像は、多くの平成女子にとっても、まさに“今、雷が落雷した”(第3話)瞬間となっただろう。

■道明寺司と花沢類のどちらを選ぶべきか

『花男』がここまでブレイクしたのは、松本潤と小栗旬、そしてヒロインを演じた井上真央の徹底した役作りとカリスマ性あふれる芝居にあるのは言うまでもない。

そこで多くの視聴者がつくしと一緒に頭を悩ませたのが、「どちらを選ぶか」問題だ。

恋愛初期の心躍る瞬間といえば、交際するまでの些細な駆け引きやすれ違いに一喜一憂することだろう。そこに魅力的な男性が2人、ないし複数人現れて自分にアプローチしてきた場合、これほど甘美な悩みはないのではないだろうか。

魅力的な男性キャラクターが2人(以上)現れ、比較することで盛り上がりを見せた作品は『花男』以外にも枚挙に暇がない。

『ごくせん第2シリーズ』、『野ブタ。をプロデュース』(共に日本テレビ系)、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜』(フジテレビ系)には巷を席巻する勢いのある役者が揃い、個性際立つキャラクターを演じることで視聴者に根強いファンを作ってきた。

「どちらを選ぶか」はいつの時代も重要な恋のスパイスなのである。

■道明寺司が残した王道ドSキャラの裏の顔

道明寺が多くの女性のハートを射抜いた理由は、花沢類というライバルの存在以外にもある。

その“ドS”なキャラクター性が、道明寺を演じた松本の力でより顕著に浮かび上がったからだろう。強引で、絶対的な自信を持つ立ち振る舞いは「ドSキャラといえば道明寺」という印象を確固たるものにした。

さらに道明寺がこれほどに傲慢な男性でありながら、どこか女心をくすぐる所以は、天然ボケという純粋な一面や、つくしを一途に想う真っ直ぐなところがあるから。

今では王道になったこの胸キュンパーソナリティは、のちに『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(以下、『花晴れ』/TBSテレビ系)にも受け継がれる。

『花男』のスピンオフとして2018年に放送された『花晴れ』では、主人公の神楽木晴をKing & Princeの平野紫耀が演じた。

道明寺に憧れ強気な態度を取るものの、本当の姿は家柄のプレッシャーに打ち勝てない弱さを抱える神楽木。演じた平野が歌番組やバラエティで見せる素の表情が神楽木とかぶる“天然”だったことも後押しし、本作も『花男』同様ヒットを飛ばすことに。

『花男』の道明寺が圧倒的輝きを持って映像化されたことは、後続のドラマにおけるドS史上にも大きな影響を与えることとなる。

今なお、ひたむきなヒロインと、強引なヒーローというカップル像は、ディティールこそアップデートされども、視聴者の心をつかんで離さないのだ。

令和の時代にも色あせることのない『花より男子』で、道明寺とつくしの描く青春をもう一度楽しんでみてはいかがだろうか。

(文:Nana Numoto、イラスト:タテノカズヒロ、編集:高橋千里)