長崎医療圏「命の選択も」 病床使用率87%、入院延期のケース増 医師ら危機感 市民に行動変容を改める

会見で病床の逼迫状況を説明する泉川教授(右のテレビ画面)と門田院長=長崎市役所

 新型コロナウイルス感染が急拡大する長崎市に県独自の緊急事態宣言が出された8日、長崎大学病院感染制御教育センター長の泉川公一教授と長崎みなとメディカルセンター(同市)の門田淳一院長は、市内の病床逼迫(ひっぱく)状況に強い危機感を示した。コロナ専用病床への転換に伴い一般病床も減り、域外への救急搬送や入院延期を強いられており、泉川教授は「命の選択が起きてしまう」、門田院長は「治療を受けられず自宅で亡くなる人が出かねない」と危惧。感染者を増やさないよう市民の行動変容を改めて求めた。
 長崎医療圏(長崎、西海、西彼長与、時津の4市町)のコロナ病床使用率は7日午後7時現在87.1%。140床のうち122床が埋まっている。
 市役所であった田上富久市長の臨時記者会見に門田院長が同席。オンラインで参加した泉川教授は、コロナ重症患者を受け入れている長崎大学病院の専用病床51床について「きょう、あすで埋まってしまうのではないか」との見方を示した。8日の県内感染者数が過去最多の65人に達し、「(第4波の)入り口。ゴールデンウイークでどれだけ人が動き、感染したか。今から(影響が)出てくる可能性がある」と警戒した。
 門田院長によると、みなとメディカルセンターのコロナ病床は42床で、使用率は7割前後と高く推移。軽症・中等症を受け入れているが、変異株への置き換わりに伴い、病状悪化が速い患者を長崎大学病院に移せず入院させ続けるケースも増えている。門田院長は「まだ(コロナ病床が)2、3割空いているが、重症患者は体位変換や人工呼吸管理をしなければならず、看護師の人数が2、3倍必要」と強調。既に一般病床を170~200床減らし、その看護師をコロナ病床に割り当てて「42床受け入れられるようにしたい」とした。
 その分、コロナ以外の患者に入院延期を強いることも増えつつあるという。門田院長は「救命救急の診療は破綻しそうな状況。交通事故で必要な手術があっても搬送先が見つからなくなってしまう」と懸念。泉川教授は「命を守るための行動を取ってくださいという『大災害』の状況。今後の(患者)数次第では命の選択が起きてしまうのではないか。非常に怖い」と危機感をあらわにした。
 こうした状況を踏まえ、市民に求める感染予防策について泉川教授は「一番いいのはロックダウン(都市封鎖)に近い状況だが、それはできない。普段一緒に生活や仕事をしている人と行動するのはある程度許容されるが、それ以外は抑えてほしい」と話した。


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