鷹の4番・柳田 決勝打の24時間前に見せた〝戦犯〟かぶる覚悟の形相

7回に勝ち越し打を放ち、気迫の表情を見せた柳田

ソフトバンクは9日の西武戦(ペイペイ)に3―1で逆転勝ち。1―1で迎えた7回、今季初の4番に座った柳田悠岐外野手(32)が二死三塁の場面で右前打を放って勝利に導いた。6回にも右中間を破る二塁打を放って同点の足掛かりを作るなど打線をけん引。4番が試合を決める王道野球でチームを救った。

前日は打線が「無死の得点機」を5度作りながら完封負け。柳田は9回二死満塁のチャンスで遊ゴロに倒れるなど5打数無安打に終わっていた。グラシアルの負傷離脱もあり、首脳陣はオーダーを熟考。「今日4番だからドッシリいけよ」という小久保ヘッドからの通達に「バリバリ意識した」。だが、すぐに「チャンスで自分が打つ。負けない」と腹をくくった。試合後のお立ち台では「塩を握りしめて自らの体にかけて清めた体で、あとは気持ちでぶつかるという作戦が成功しました」と胸をなでおろした。

その24時間前、普段は見せない姿があった。腰を下したベンチでしばらくうつむき、人目をはばからず悔しさをかみ殺していた。かねて弱みを見せることを嫌う男。チャンスで打てない自分が不甲斐なかったはずだ。個人の調子うんぬんよりも、チームの勝敗を背負って戦っているゆえの抑えきれない感情があった。

2017年、シーズン後半に4番に固定された。そのオフにこう語ったことがある。「負けたら僕らの責任。高い給料もいただいている。叩かれるのは若い人じゃない。僕らの仕事ですから」。新聞紙上で非難の対象になることに〝ドンと来い〟のスタイルを取ってきた。SNS時代、ネットにはリアルタイムに忖度のないファンのストレートな声があふれている。それも真正面から受け止めている。世間的には天真爛漫で「永遠の野球少年」のようなイメージがあるかもしれない。それも真実だが、芯は一本筋の通った真面目な男。今回も打てない責任を痛感していたはずだ。

家や球場で「たまにやる」という〝お清めエピソード″を披露すると、緩めた表情をすぐに引き締めた柳田。これまでも悔しさや苦しみを己のバットで取り返してきた。〝漢″を見せた鷹の大砲に大暴れの予感が漂う

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