阪神・糸井「ウチの子、もうアカン、オッサンやで…」超人母の限界説ぶっ飛ばす母の日アーチ

カーネーションをもってポーズをとる虎のヒーロー・糸井

まだまだ輝きは失っていなかった。阪神・糸井嘉男外野手(39)が9日のDeNA戦(横浜)で同点の4回に決勝の2号2ランを右翼席に放り込んだ。プロ18年目の今季は外国人勢や近大の後輩でもある新人・佐藤輝明内野手(22)の活躍に押されて控えに甘んじる日も多いが、気力の衰えは一切ない。母の日に放った豪快なアーチは我が子の〝限界説〟を唱えていた母をも見返す一撃となった。

チームをデーゲーム14連勝に導いたのはベテランの一振りだった。この日は「6番・右翼」でスタメン出場し、4回に同点とした直後に見せ場が訪れた。無死三塁からDeNA・ピープルズの142キロ直球を一閃。2試合ぶりの2号勝ち越し2ランを右翼席中段まで運び、このリードを中盤以降4人の中継ぎ陣のリレーで守り切った。

3―2の勝利後、糸井はヒーローインタビューで「最高の結果を出すことができて良かった。完璧でした!」。矢野監督も「素晴らしいホームランやったし、最高でした!」とチーム最年長の一撃を手放しで褒めたたえた。母の日に披露した元気な姿は、故郷の京都・与謝野町で暮らす母・千代乃さんのもとにも届いたことだろう。

阪神入団後はレギュラーが当たり前だった糸井だが、昨季は下半身のコンディション不良などもあり86試合の試合に出場にとどまり、打率2割6分8厘、2本塁打と全く〝らしさ〟を発揮できなかった。今年は世代交代の波も押し寄せ、気がつけば代打の切り札が主たる役どころ。本人も「もう、その下はファームしかない」と募る危機感を公言していた。

そんな糸井の行く末をあろうことか、昨夏、通算300盗塁に王手をかけた時点で実母・千代乃さんは予言していた。

「ウチの子なあ~、もうアカンで。そりゃあ『しゃないな』って思うし、だってもうオッサンやで! 40(歳)近くの。もうタイガースさんも、嘉男じゃなくて、若い子使ってあげて~って親の私が見てて思うぐらいやもん。私は野球分からんけど、普通にテレビ見ていて思うわ。『嘉男、試合出てるの何で?』って」

息子への容赦ないダメ出しも「超人の母」ならではだろう。この日の糸井は「いかにピンク色を揃えるか考えてました」とバッティング手袋や右ヒジのサポーター、リストバンクに母への感謝を表すピンク色を身につけて出撃した。そんな糸井でさえ、以前から「みんな俺のコメントを聞いてブッ飛んでるとか思ってるやろうけど、俺の母ちゃんは、もっとパンチ効いてるからね」と〝母の小言〟は異次元のパンチ力と打ち明けていた。良くも悪くも〝ド直球〟な母のいい回しは息子にとっては慣れっこなのだ。

それでも息子として断固〝否定〟しておきたかったのは年齢の衰えからくる「限界説」だった。この日の一発で三塁ベンチで出迎えたナインの祝福を受けた後、テレビカメラに向けて「まだ俺は終わっとらんで!」とばかりに、ピンク色の筋骨隆々の右腕で力こぶを作って見せた。7月に40歳になる虎の超人はまだまだ元気だ。

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