【一社として本格始動するセルフケア推進協議会】役員に皆川尚史氏/クスリのアオキHD・青木桂生会長やスギヤマ薬品・杉山貞之社長も

【2021.05.10配信】任意団体として活動してきた日本セルフケア推進協議会(三輪芳弘会長)は、5月10日に会見を開き、4月9日付けで一般社団法人に移行したことを報告した。一社の役員として、元厚生労働省 大臣官房審議官の皆川尚史氏のほか、クスリのアオキホールディングス会長の青木桂生氏やスギヤマ薬品社長の杉山貞之氏が名を連ねている。皆川尚史氏は現在、日本保険薬局協会で専務理事を務めている。

一般社団法人日本セルフケア推進協議会は、2021 年 4 月 9 日に設立し、同年 5 月より
本格的に事業を開始する。事業は任意団体日本セルフケア推進協議会より引き継ぎ、実施していく。

一般社団化によって、「真に生活者の健康寿命延伸および疾病等の予防対策への貢献と、関連産業界の活性化のため、情報のプラットフォームとしてさらなる飛躍を目指す」方針。一般社団法人として活動することにより、組織マネージメントが向上し、団体としての透明性が高まり、社会的信用を得ることで、民間だけでなく各官庁・他団体等との繋がりが拡大し、今後各分野における事業活動の更なる活性化につながるとの考えだ。

役員(理事)には以下の13人が就いている。

東京大学先端科学技術研究センター がん・代謝プロジェクトリーダー/名誉教授児玉 龍彦氏
京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学 教授 川上 浩司氏
元厚生労働省 大臣官房審議官 皆川 尚史 氏
公益社団法人日本WHO協会 理事長/大阪大学 名誉教授 中村 安秀氏
明星大学 経営学部 教授/元経済産業省 中部経済産業局長 細川 昌彦氏
第一生命保険株式会社 常務執行役員 渡辺 克久氏
株式会社クスリのアオキホールディングス 取締役会長 青木 桂生氏
株式会社クスリのアオキ 会長付 浦山 哲治氏
医薬情報研究所 取締役/株式会社エス・アイ・シー 医薬情報部門責任者 堀 美智子氏
株式会社スギヤマ薬品 代表取締役社長 杉山 貞之氏
株式会社 CLINICAL STUDY SUPPORT 代表取締役社長 磯村 達也氏
興和株式会社 代表取締役社長 三輪 芳弘氏
興和株式会社 執行役員 市原 輝夫氏

代表理事(会長)は、興和株式会社 代表取締役社長の三輪 芳弘氏。

一社化でよりオープンな議論を展開

会見に臨んだ三輪会長は、一般社団法人化の意義について、「国との関係など、社会的な支持が変わってくる。団体活動を私物化することなく、よりオープンにしていくため」と語り、「開けた議論で国民のためにできることを議論していく」と強調した。

協議会が目指す「健康サイクル」の理念に関しては、「どこかが利益を得ると、どこかが損をするといった既成概念にとらわれるのではなく、新たなビジネスモデルを作っていくことで、関係者それぞれが潤い、国民の健康のためにもなるものを目指そうということ。そういうことができるのですかと言われるが、そういうことを考えていく必要があり、それによって逼迫する医療費への貢献にもつながる」と説明した。

協議会の団体名にある「セルフケア」に関する部署が厚労省に設置されたこと(医政局経済課セルフケア・セルフメディケーション推進室)に関する考えを記者から聞かれると、「セルフメディケーションはセルフケアの一部だと考えている。なぜこの2つのキーワードが並列する部署名になったのか。勉強不足な面もあるため、厚労省とのコミュニケーションを深めていきたい」と語った。

協議会が提唱しているセルフケア税制の概要については、市原輝夫業務執行理事が、「セルフケア推進勉強会=会長:野田毅自民党税制調査会最高顧問)とも協議を進めている最中であるため、詳細が開示できない」と理解を求めた。

同勉強会に関しては、3月10日に1回目の勉強会が開かれており、コロナ禍でのセルフケアの重要性が再認識される中、さらなる普及・定着への支援が必要だと提言されている。

薬剤師など専門家による情報提供方法と行動変容を検証/まずは循環器から

なお、今期の事業計画は大きく3つの柱。「会員の情報共有と解決のための討議 」「日本型セルフケア推進 」「日本型セルフケアのアジア太平洋地域への普及 」。

「日本型セルフケア推進 」では、以下の3つに取り組む。

① 健康サイクル検討部会にて、健康サイクルに関するシミュレーションの実施。
健康サイクルが実際に生活者の健康に寄与できるか等の検討を開始する。医療経済評価によるシミュレーションの内容 ・手法を検討し、産学官民協働で実施し、3~5年後に得られた結果を積極的に公表。最終的には政策につながる様なエビデンスを構築することを目標とする。客観的で網羅的な評価を実施するため、国内外の専門家の力を借りながら、慎重にバイアスの排除や結果の妥当性の検討を行う。
健康サイクルの検討内容は、医師や薬剤師など専門家による生活者へのセルフケア情報の提供方法及びその情報に基づく生活者の行動変容や疾病の予防、重症化の抑制などを含むものとする。まずは循環器系から始め順番に対象を絞りながら進めていく予定。

② 生活者参画検討部会にて、日本型セルフケアを行う生活者参画の方策の検討を行う。近々実施される「日本型セルフケア」の促進に向け、行動変容などを検討する実証試験であるブルーゾーンプロジェクトの第一弾「水都大垣セルフケア・トライアル」が開始される。先ずはこれを第一弾として支援する。さらに同様な取り組みがあれば、積極的に支援していく考え。そして、これに続く他地域での計画実現や支援に向けた検討も合わせて行う。
また、政官民勉強会「セルフケア推進勉強会」に参画するなど、関係者と広く意見交換する。セルフケアの一つの例として、三密を防ぎ、マスクをして手洗いと消毒を心掛ける事によるセルフケが、新型コロナウイルス感染症対策になるだけでなく、インフルエンザ対策につながり、この医療費は前年のシーズンに比べ約 1480 億円の医療費が減少している。 また昨年は、総死亡者数が減少し、近年において一番少ない年となっている。これもセルフケアへの意識の向上が関与している可能性がある。
「セルフケア税制(仮称)」を検討する事は、新たな産業を創出し、新たな産業を活性化させ育成していく事に繋がる。新たな産業が作られる事が税の増収に繋がると考えており、社会全体にも健康をもたらすとの考え。協議会には、スタートアップ企業、ベンチャー企業を始め、様々な業界の民間企業の方が入会しており、日頃から横串を刺した議論を行い、日々の活動をおこなっている。
単一の業界に囚われず、様々な業界の方と協議する事で「セルフケア税制(仮称)」を生活者の行動変容を後押しする制度の実現を目指して検討を進め、政策につながることを目標とする。

③ データ活用部会にて、データを活用した日本型セルフケアの実践の検討を行う。
これまでの日本セルフケア推進協議会の活動を継続してステークホルダーによるワーキンググループを開催し、データを用いた日本型セルフケアの推進が、生活者のセルフケアにどのような影響を与え、推進が期待できるかを議論する。特に新型コロナウイルス禍の影響を考慮して、リモート会議システムを活用した部会運営を積極的に行う。

大阪・関西万博の参加型企画である「TEAM EXPO 2025」プロジェクトに登録

「日本型セルフケアのアジア太平洋地域への普及」では、以下の3つに取り組む。

① 国際連携部会の広報戦略ワーキンググループにおいて、協議会の国際社会への紹介を目的し、大阪・関西万博の参加型企画である「TEAM EXPO 2025」プロジェクトに登録し、本プロジェクトより提供されるプラットフォームを有効活用する。また、多言語化対応や海外のセルフケア関連の最新情報の発信など、事務局全体で当協議会のホームページの充実化の検討も開始する。

② 「日本型セルフケア」海外普及ワーキンググループにおいて、一般社団法人 Medical Excellence
Japan の中期計画実践委員会活動に積極的に参加することにより、国内外の産官学のネットワーキングの拡大と深化を図り、共にアジア太平洋地域への「日本型セルフケア」を普及のための基盤整備を引き続き推進する。

③ 情報収集ワーキンググループを立ち上げ、グローバルな視点からの最新のセルフケア関連情報の収集、分析などを実施。特に公益社団法人日本 WHO 協会と連携し、国際保健機構(WHO)においてのセルフケアに関わる最新の報告やガイドライン、ステイトメントなどを深く読み解くとともに、当協議会の会員が希望する海外情報、市場、規制などの情報収集・分析も対応していく。

万博への参画に関して市原業務執行理事は、「協議会に参画しているスタートアップの試みを含め、世界に発信していきたい」と意欲を語った。

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