【全日本】ヨシタツが西島洋介戦に向けて河川敷アリキック特訓を敢行

河川敷でアリキック特訓を行ったヨシタツ

〝王道ストロングスタイル〟を掲げ我が道を行く全日本のヨシタツ(43)が四半世紀越しのリベンジを目指し、思い出の多摩川河川敷で「アリキック特訓」を行った。

ヨシタツは今年最初のビッグマッチとなる16日の東京・大田区総合体育館大会で、元ボクシングWBF世界クルーザー級王者の西島洋介(47)との異種格闘技戦に臨む。その試合に向け本紙を多摩川河川敷に呼び出したヨシタツは、やおら黒のショートタイツ一枚になりこう切り出した。

「この試合は、俺にとって25年前のリベンジでもあるんです」

17歳だった高校2年生の頃、通っていた岐阜県のボクシングジムに〝洋介山〟として日本中から注目を集めていた西島がやってきたことがあったという。アマチュアでのタイトル経験があるカナダ人ヘビー級ボクサー在籍しており、貴重な重量級のスパーリング相手を求めてのことだった。その際、体重85キロだったヨシタツ青年もスパーリング相手に名乗りを上げたが「ヘッドギア越しでもケガをさせてしまう可能性がある」と西島サイドから却下され、マススパーリングにとどまったのだった。

悔しい過去を告白したヨシタツは「あの時、リングにすら上がれなくて悔しい思いをしました。今回はそのリベンジでもあるんです。それにしても当時、マスだけでもヘビー級なのにパンチが早くて驚きました」と力をこめる。そんな思いを抱えて臨むだけに必勝の思いは強い。

「時間の許す限りボクサー対策を研究したんです。それでたどり着いたのはやっぱりプロレスVSボクシングの原点ともいえる『アントニオ猪木VSモハメド・アリ』の試合でした。あの伝説の一戦を見ながら考えていたら、ここに来ていました。デビュー前ふるいにかけられ、デビューしてからも血反吐を吐きながら練習した俺の原点です」

こう話すと、近くを散歩していた若いカップルが目を合わせないようにその場を去るのも気にせず、青春時代を過ごした新日本プロレスの道場近くで汗だくになり仮想・西島を空に描きながらシャドーボクシングなどを行った。

気付けばその途中から、地面に背中をつけて下から蹴り上げる動作を交えるようになっていた。1976年6月26日の格闘技世界一決定戦でルールに縛られた猪木氏が編み出し、アリの足を破壊した通称〝アリキック〟の動きだ。

思い出の場所でイメージトレーニングするうちにアリキックにたどり着いたヨシタツは「これだ…」と一人ごちると試合に向けさらに磨きをかけると力説し「西島戦は俺と王道ストロングスタイルの今後を大きく左右する大事な試合になる。その先、またベルトを目指すのか、それとも別の何かなのか。もしかしたら次の戦場はリングの外かもしれない」と拳を握った。

積年の思いを込めて臨む大一番。ベテランはここで新境地を切り開くことができるだろうか。

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