「コロナ禍だからこそ思いっきりステキな楽しいドラマを」『大豆田とわ子と三人の元夫』にPが込める思い

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●TBSから移籍一発目のプロデュース作品

きょう11日の放送で第5話を迎える松たか子主演ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系、毎週火曜21:00~)。初回から視聴者を少しでも楽しませようと、サプライズ続きで話題を集めている。松が演じる大豆田とわ子をはじめ、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平が演じる3人の元夫役のキャラクター設定から、女優・伊藤沙莉によるナレーション、毎回変わる主題歌、一言一句聞き逃せないセリフに至るまで、とにかく芸が細かい。

一体どんな狙いで届けられているのか。TBSからカンテレに移籍し、一発目の作品となった佐野亜裕美プロデューサーに話を聞いた――。

■当初は“三人の元妻”という案も

このドラマは、坂元裕二氏の完全オリジナル脚本。原作がない場合、当然ながらゼロからその世界観を作り上げる必要がある。時間も手間もかかるが、「コロナ禍だからこそ、思いっきりステキな楽しいドラマを作りたいと思った」と語る佐野P。彼女こそが企画を立ち上げた張本人であり、全体を指揮する人物だ。

ドラマの顔となる主演・松たか子へのオファーは、今から約1年前に企画が固まった直後のことだったという。

「当初、男性の弁護士が主役で、3人の元妻という話も上がっていたんです。でも、男女逆の方が面白くなるのではないかと、キャストありきではなく、企画ありきで話を進めていく中で、『大豆田とわ子』のキャラクターにたどり着き、松さんがやってくださるならば間違いないと思いました」(佐野P、以下同)

こうしてバツ3で子持ちの建設会社社長という社会の型にはまらない40歳の独身女性の役を、松が演じることになった。

■苦労した元夫役3人のキャスティング

キャスティングの段階で苦労したのは、大豆田とわ子のことを忘れられない3人の元夫役の組み合わせだった。最終的には、最初の夫で東京・奥渋谷にあるレストランのオーナー兼ギャルソンの田中八作に松田龍平、2番目の夫でファッションカメラマンの佐藤鹿太郎に角田晃広(東京03)、3番目の夫でエリート弁護士・中村慎森に岡田将生を起用することで落ち着くが、誰が欠けても成立しない究極の選択だったという。

「3人のバランスと、松さんとの組み合わせとして見たい人という2つの観点からいろいろなパターンを考え、しっくり来たのがこの3人でした。ただし、(松田)龍平さんにお願いするかどうかは悩みました。松さんだけでなく、龍平さんも、(佐野PがTBS時代に坂元裕二氏と手がけた)『カルテット』に出演しているので、似たようなことをやるなと思われてしまうかなと。でも、本当に個人的な思いですが、もっともっと艶やかで魅力的な龍平さんを見られるのではないかと思うところもあって。今回は、ある意味そのリベンジです。結果、“色っぽい松田龍平”を見せることができていると思っています。期待を込めて『色っぽい龍平さんをよろしくお願いしますね』と現場で本人に言い続けています」

岡田の起用も納得の様子。「超がつく美形で、かつ底知れなさが漂っています。松さんと並ぶと、なんだか不穏な雰囲気になり、そわそわする2人を表現できているかと。韓国ドラマ『トッケビ』のコン・ユを彷彿とさせるタートルネック姿にしてもらったことも、岡田さんの美しさやかわいらしさを伝えるのに役に立ったのではないかと個人的にとても満足しています(笑)」と説明し、その魅力の引き出し方にもひと工夫が加えられていることが分かる。

さらに、角田の好演ぶりも「役者として天才的」と絶賛。狙い通りのキャスティングによって、かつてないほど息が合っている現場が築かれていることも伝えられた。聞けば、松を含めた4人のグループLINEまで作られ、ロケ中の写真を送り合うなど、芝居以外の時間もやり取りが続いているという。

●坂元裕二氏との共通認識「カルテットとは違うことを」

そもそもこの企画は、佐野Pが坂元裕二氏ともう一度仕事がしたいと始まったものだった。連ドラをしばらくお休みすると宣言していた坂元氏だったが、閉塞感漂う今だからこそ、彼の書く連ドラが見たいと、何度も「また一緒にドラマやりましょう」と企画の話をした。佐野PがTBSから心機一転、カンテレへと所属する放送局が替わったことを知った坂元氏から、冗談交じりに「移籍記念にやりましょう」とも言われ、事が進んでいく。信頼関係を築いてきた証でもあり、「『カルテット』とは違うことをやろう」と、その辺りも迷うことなく意見が一致する。

ナレーションを取り入れたことも、違いを出す狙いの1つ。「~の大豆田とわ子」と淡々と説明する中にコメディセンスが光る伊藤沙莉の声が「クセになる」と評判を呼び、狙い以上の効果も得ている。

また、衣装や音楽を徹底的にこだわることも意識した。映画『モテキ』など作品の世界観を衣装で支えることに長けているスタイリストの伊賀大介氏が3人の元夫を、松の衣装は広告・ファッション誌で活躍する杉本学子氏が担当している。さらに、音楽は米津玄師の楽曲で共同編曲など手掛ける新進気鋭の音楽家・坂東祐大氏と、フリーでその道を極める顔ぶれがそろった。

■毎話変わるエンディングは『エヴァ』をヒントに

極めつけは、エンディングで流れる主題歌が毎回変わる演出だ。「STUTS & 松たか子 with 3exes」による主題歌をベースに毎話、異なるラッパーが登場。第1話はKID FRESINO、第2話はBIM、第3話はゆるふわギャングのNENE、第4話はDaichi Yamamotoと、それぞれのラッパー目線でその週のエピソードを解釈したラップが披露されている。

古巣・TBSの先輩であり、「坂元さんの作品が好きで、テレビのことはもちろん、音楽のことにもとても詳しい」と信頼する藤井健太郎氏(『水曜日のダウンタウン』演出)に相談すると、トラックメーカー/MPC PlayerのSTUTS氏を紹介され、このプロジェクトが動き出した。毎週エンディングを変えていくというアイデアは『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディング曲「Fly Me To The Moon」がヒントになったという。

「『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見るためにTVシリーズを見直していたら、いろいろなバージョンのエンディング曲があることにたまたま気付きました。自由さがあるアニメのように、連ドラももっと自由でいいんだなと思いました」

サプライズが続いた序盤戦を経て、今夜の5話と続く6話はストーリーの展開が一気に進んでいくといい、「私が言うと怒られると思いますが、これぞ坂元脚本の真骨頂」と太鼓判を押す。一分の隙もなく見逃せないエピソードがまだまだ続いていきそうだ。

●佐野亜裕美
1982年生まれ、静岡県出身。東京大学卒業後、06年にTBSテレビ入社。『王様のブランチ』を経て09年にドラマ制作に異動し、『渡る世間は鬼ばかり』のADに。『潜入探偵トカゲ』『刑事のまなざし』『ウロボロス~この愛こそ、正義。』『おかしの家』『99.9~刑事専門弁護士~』『カルテット』『この世界の片隅に』などをプロデュースし、20年6月にカンテレへ移籍。『大豆田とわ子と三人の元夫』を担当する。

長谷川朋子

はせがわともこ