場外弾に看板直撃弾…佐藤輝明の攻略法は? DeNAの救援2投手が示した“お手本”

阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

鍵は膝元の変化球と高めの150キロ超の速球

リーグトップタイの10本塁打を放っている阪神のドラフト1位ルーキー、佐藤輝明内野手。特に敵地・横浜スタジアムでのDeNA戦で、多くの衝撃的なシーンを演じている。4月9日には右中間最上段の「鳩サブレー」の看板を越える場外弾を放ち、5月7日の1発は右翼最上段の「業務スーパー」の看板を直撃した。規格外の新人に対し、DeNAサイドは対策を練っているのだが……。

国吉佑樹投手が真ん中付近に投じた失投のカットボールを逃さずとらえた場外弾と、中川虎大投手のインハイの145キロ速球を肘をたたみながら巧みに運んだ看板直撃弾。いずれもソロではあったものの、破壊力は度肝を抜いた。

許しているのは、一発だけではない。データをもとに、DeNAは佐藤輝に対して遊撃手が二塁ベース後方、二塁手が一塁寄りに位置を変える“輝明シフト”を敷いているが、8日の対戦では4回に二塁ベース右の狭い二遊間、5回にはこれまた狭い一、二塁間を抜かれ、連続適時打となった。シフトを堂々と正面からぶち破られた格好で、三浦大輔監督は「シフトの間を抜かれたらヒットだと思っている」と脱帽するしかなかった。

9日の対戦では3打数無安打に抑えたものの、1点リードで迎えた5回、先頭の佐藤輝を四球で歩かせ、続くサンズの左中間二塁打で、一塁から長躯ホームインを許した。微妙なタイミングだったが、激走の末ヘッドスライディングでタッチをかいくぐるようにして同点のホームを奪われ、これが続く糸井の勝ち越し2ランにも繋がった。結局、佐藤輝に“おいしい所”を持っていかれたわけである。

佐藤輝はDeNA戦で打率.333、3本塁打、10打点

佐藤輝との対戦は、打率.333(9試合36打数12安打)3本塁打、10打点で、広島(7試合、対戦打率.357、4本塁打12打点)に次いで打ちまくられている。横浜スタジアムでは現在、佐藤輝が打席に入ると、右中間後方場外の横浜公園の通行人へ向けて「打球が場外へ飛び出ることがございます」と注意喚起のアナウンスを行っており、今後ハマスタ名物になりそうだ。

もっともこの日、佐藤輝攻略のお手本のようなピッチングを見せた投手もいた。7回先頭で打席に入った際、マウンドには最速160キロ左腕のエスコバーがいた。真ん中低め153キロで見逃しストライクを取り、続いて真ん中高めの155キロのツーシームを空振りさせて追い込んだ。最後はカウント1-2から内角低めの156キロで詰まらせ、力のない三直に仕留めた。これでエスコバーと佐藤輝の対戦は3打数無安打となった。

9回1死走者なしでの相手投手は、守護神の三嶋。カウント1-0から、2球目の外角高めの152キロ速球で空振り。3球目は一転して内角低めの142キロのスライダーで空振りを奪った。最後はカウント2-2から再び外角高めの152キロを振らせて、空振り三振に切って取った。この時捕手は内角低めに構えており、いわゆる“逆球”だったが、球威で押し切った。これで「三嶋vs.佐藤輝」は2打席2三振である。

三嶋が投じたスライダーのような膝元の落ちるボールは、左打者にとって死角で、さすがの佐藤輝も容易にはとらえられない。ただし、高めの速球と組みわせることがポイントで、こちらは中途半端なスピードや球威だと、危険なホームランボールとなる。内角低めにキレのある変化球をコントロールできることと、150キロ超の速球。真っ向勝負で佐藤輝を打ち取るには、この2つが必須といえるかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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