【5月11日付社説】八十里越道路/地域振興もたらす活用探れ

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 全線開通までに、県境を越えた地域活性化や観光振興などの方策を検討することが大切だ。

 只見町と新潟県三条市を結ぶ国道289号の「八十里越」(延長20.8キロ)が、2026年にも開通する見通しとなった。国が直接整備している県境の11.8キロについて、国土交通省は今後5年程度で全線開通を目指すと発表した。

 本県南部を横断する国道289号は、新潟市からいわき市までの総延長約300キロに及ぶ。このうち新潟県境の峠道は急峻(きゅうしゅん)な山や深い谷が多く、車両の通行ができない。このため国と福島、新潟両県が1989年度から区間を分け、トンネルや橋を整備し、不通区間の解消と道路改良を進めている。

 豪雪地帯で半年間は工事ができない。特に国の施工区間は難工事とされ、着工から30年以上を経てようやく完成のめどが立った。福島、新潟両県もそれぞれの施工区間の工事を着実に進め、計画通りの開通を実現してもらいたい。

 只見町から新潟県へは魚沼市につながる国道252号のルートがあるが、冬期間は県境の「六十里越」が閉鎖される。山越えの道路が雪で閉ざされる南会津や奥会津の住民にとって、迂回(うかい)ルートを使わず、通年で車両が通行できる路線の完成は、長年の悲願だ。

 人口約9万5千人の三条市には上越新幹線の燕三条駅があり、商業施設なども多い。人の動きや農産物など物流が活発になり、交流人口の拡大も見込まれる。地元自治体や商工関係者は、新たな交通網を起爆剤に、地域経済の活性化につながる施策が求められる。

 特に期待されているのが救急医療体制の向上だ。病院がない只見町から、会津若松市へ救急患者を搬送するには約1時間30分かかっているが、三条市の病院への搬送で約1時間15分に短縮される。

 県などは、新潟県の自治体や医療機関と調整し、迅速、安全に患者を搬送できる体制を整えるとともに、災害時の救援活動や物資輸送での活用も検討してほしい。

 只見町と南会津町、三条市は昨年5月に「越後・南会津街道 観光・地域づくり懇談会」を発足させた。トレイルコース新設など具体的な観光施策を協議している。

 いまも歴史の面影を伝える八十里越をはじめ、南会津は豊かな自然にも恵まれている。周遊ルートなどを造成し、新潟側からの誘客策に知恵を絞る必要がある。

 冬期間の除雪なども課題になる。道路を管理する県などは、人材確保などに努めて万全な体制を確立し、車両が安全に通行できる環境を整えなければならない。