230奪三振ペースの要因は“時代に逆行” 中日・柳裕也に起きた投球の変化とは?

中日・柳裕也【写真:荒川祐史】

大野雄、福谷に次ぐ“先発3番手”も…屋台骨支えるエース的躍動

プロ5年目を迎えた中日の柳裕也投手が、驚異のペースで奪三振を量産している。ここまで12球団ダントツの「58」を記録。昨季パ・リーグ最多奪三振のタイトルを獲得したオリックスの山本由伸よりも、現時点で13個も上回る。昨季はリーグ8位タイの「88」だった右腕に何が起きたのか――。データを紐解くと、確かな“変化”も読み取れる。

柳はここまで7試合に登板して3勝1敗。今季初登板となった3月27日の広島戦(マツダ)こそ4回4安打3失点で黒星を喫したが、以降は6試合連続でクオリティスタート(6イニング以上で自責点3以下)。防御率1.72は、開幕から5戦5勝した巨人・高橋優貴と僅差でリーグ2位となっている。

中日投手陣は、昨季沢村賞を獲得した大野雄大が絶対エースとして君臨するが、今季は調整遅れでの開幕。9日には上肢のコンディション不良で一時的に登録抹消された。昨季チーム2位の8勝を挙げた福谷浩司が開幕投手を担ったが、ここまで6試合で1勝3敗、防御率4.46と安定感を欠いている。序列的には“3番手”だった柳だが、エース不在の中で果たしている役目は大きい。

マウンドでの頼もしさは、データにも反映。セイバーメトリクスの指標などを用いて分析などを行う株式会社DELTAの指標と見ると、過去の姿と変わらない点がある一方で、大きな違いが顕著に表れている部分もある。

ストレートの平均球速は変わらないが…割合は昨季比で1割も減少

直球の平均球速は、今季のプロ野球平均144.8キロを下回る142.0キロで昨季とほぼ変わらない。ただ、全投球に占める割合は昨季の44.0%から10ポイント近く下がった34.3%に。11勝を挙げた2019年の47.6%からは13ポイント以上も下がっている。一方で、カットボールは昨季比で約8ポイント増の29.8%まで上昇。チェンジアップも4ポイント増の11.7%となり、“変化球多投”の傾向が出ている。

割合の変化は、結果にも反映されている。どれだけ失点を増減させたかを球種ごとに示す指標で、ストレート(wFA)は「-0.4」なのに対し、カットボール(wCT)は「6.0」、チェンジアップは「5.2」と貢献している。カーブとスライダーもプラス数値で、やはり変化球が快投を支えている。メジャーリーグに追随するように、スピードボール全盛になった現在のプロ野球で、時代に逆行するかのような姿で、打者を手玉にとっている。

その中で、大きな改善を見せているのがチェンジアップ。昨季は柳自身が「シンカー」と呼んでいた球種で、過去4年間は常にマイナス数値だった。ただ、チェンジアップ一辺倒ではないのも事実。キャリアハイの成績を残した2019年は、「wCT:16.5」と“困ったらカットボール”だったが、今季は各球種が底上げされている。

もちろん制球も抜群。ストライクゾーンとボールゾーンを合わせて25分割にしたヒートマップで見ても、昨季以上にアウトローに徹底して投げ込めている。その器用さと完成度の高さは、奪三振とは無関係ではないはず。シーズン230個ペースで“独走”する柳の奪三振ショーが、チーム躍進の旗印になりそうだ。

【画像】柳の“アウトロー徹底”を裏付ける投球分布図の比較(株式会社DELTAのデータ参照)

中日・柳裕也の2020年の対右打者投球分布図【画像提供:DELTA】

中日・柳裕也の2021年の対右打者投球分布図【画像提供:DELTA】

中日・柳裕也の2020年の対左打者投球分布図【画像提供:DELTA】

中日・柳裕也の2021年の対左打者投球分布図【画像提供:DELTA】 signature

(Full-Count編集部)

© 株式会社Creative2