佐藤輝&牧の活躍はコロナ禍が要因!? 評論家にイジられずのびのびスイング

リーグトップタイの10本塁打を放っている佐藤輝

【赤坂英一 赤ペン!!】コロナ禍が続く今季、阪神・佐藤輝、DeNA・牧ら新人の活躍がなかったら、さぞや味気ないシーズンになったことだろう。彼らがノビノビとバットを振れている理由は何なのか、指導者経験の長い球界OBの指摘になるほど!と思った。

「どこの新人もコロナ禍のおかげで評論家にイジられずに済んでいるからだよ。特に佐藤輝なんか、阪神であれだけ注目されているだろう。もしコロナ禍の世の中でなけりゃ、オープン戦から評論家がよってたかって、フォームをグチャグチャにしたかもしれない」

長引くコロナ禍の影響により、現在は球団OBの評論家もグラウンドに出入りできない。コロナ前のように、選手にああだこうだと指導するのも厳禁。それが、佐藤輝のような大物新人には幸いしているというのだ。

DeNA・牧も、首脳陣がチェックしているのはコンディションだけ。技術的な助言は牧のほうから求められない限り、控えているという。これは田代巡回打撃コーチの助言によるものらしい。

牧は中大3年時に一念発起、コーチと話し合いを重ねて、現在の下半身主体のフォームをつくりあげた。それでプロでも結果を出している以上、周りが口出しして打ち方を変えたりするものではないということだろう。

田代コーチは横浜二軍監督だった2010年、新人の筒香(現レイズ)についても「何も教える必要はないよ」と言っていたものだ。巨人で二軍打撃コーチを務めていた16年も、ブレークする前の岡本和を「直すところは一つもないない」と評している。結局、本当に力のある選手は、放っておいても出てくるのだ。

そういえば、日本ハム・栗山監督も本誌評論家・伊勢孝夫氏との対談で、評論家による指導の弊害について、こんな話をしていたことがある。

「(監督やコーチが我慢して教えても)行ったり来たりする子は前に進まない。ほら、誰か(評論家)が来てちょっと変なことを言うじゃないですか。そうすると、うまくいかない」(17年2月23日付紙面「伊勢孝夫・新IDアナライザー」)

その点、日本ハムは本拠地が北海道だからわざわざ足を運んでくる評論家が少ない。もし東京にいたら「グチャグチャになると思います。人気ある選手が多いんで」と栗山監督は話している。

せっかくだから、今後とも佐藤輝、牧ら新人にはコロナ禍を忘れさせてくれるほどの活躍を期待したい。本当は忘れてはいけないのだが。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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