5月23日に女流芸術家発表交流会 中野重治「春さきの風」構成詩劇など上演

 「第8回女流芸術家発表交流会」が、5月23日(日)午後1時半から、山口市民会館(山口市中央2)で開かれる。「明日を紡ぐ大地の会」(TEL083-921-2476)が主催し、サンデー山口など後援。

 舞台は2部構成。第1部ではまず、初出演の「鴻峯吟詠しのぶ会」が、吟詠と語りの構成吟「吉田松陰」を披露。続いて、フルート奏者の藤村順子さんが「星に願いを」など3曲、サクソフォン奏者の甲斐尚美さんが主宰する「Ototumugiサクソフォン・アンサンブル」が「命の奇蹟」などを演奏する。次に花柳流「むつみ会」が、清元「神田祭」、長唄「梅の栄」を踊る。1部のトリは、パーカッション奏者の川手艶子さん率いる「Blood Orange」。「島人の宝」「童神」「花」など、沖縄の曲を歌と楽器で奏でる。

 第2部は、主催の「明日を紡ぐ大地の会」が、20世紀の日本を代表する詩人・作家・評論家の中野重治を取り上げ、彼の青春時代の詩と小説で構成した「構成詩劇『春さきの風』~詩人・中野重治の世界」を上演する。

▲中野重治

 1902年、福井県の農家に生まれた中野重治は、祖父母の薫陶を受けて、庶民の生活や文化に深い愛情と理解を持つ文学青年へと成長した。金沢の第四高等学校へ進み、詩人・室生犀星と出会ってからは、本格的に文学への道を志す。1924年、東京帝国大学独逸文学科に入学し、堀辰雄らとともに同人誌「驢馬」を創刊。また、学生運動団体「新人会」に加入し、プロレタリア文学活動にも参加した。20代半ばで詩人・作家として活動を始めた彼は、「夜明け前のさよなら」「歌」「雨の降る品川駅」など立て続けに詩を創作。1928年には、処女小説「春さきの風」を発表した。この構成詩劇では、生み出した作品とともに彼の青春時代をたどっていく。

 チケットは大人1000円で、高校生以下は無料。同館などで購入できる。なお、来場の際はマスク着用への協力が呼びかけられている。

「市民の郷土への誇りを高めよう」と活動 明日を紡ぐ大地の会

 「明日を紡ぐ大地の会」(福島光子代表)は、もとプロ劇団メンバーを中心に2010年に結成された。山口市内の文化芸術団体のネットワークづくりや、古今の優れた作品・人物に光を当てることなどによって「市民の郷土への誇りを高めよう」と活動を続けている。

 同会の福島久嘉さんは「2020年は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、文化・芸術関係の催しがほぼ中止となり、芸術家たちは苦しい思いをした。今回出演する人たち、それぞれが舞台に立てる喜びを伝えてくれ、とてもうれしい。焦点を当てた中野重治は、小説『萩のもんかきや』で萩市を舞台にするなど、山口県にもゆかりのある文学者。主に初期の頃の作品を取り上げて舞台を構成した。彼の青春時代の世界を楽しんでほしい」と話す。

© 株式会社サンデー山口