「エシカル消費」の輪広がる 損得よりも倫理性 食品からファッションまで

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買い物客が持参した容器に食品を詰める量り売りマルシェ=4月20日、仙台市青葉区

 「エシカル(倫理的)消費」という言葉を最近耳にします。目先の損得ではなく、社会のためになるかどうかを基準に買い物をする消費スタイルを指します。何だか小難しいと思われがちですが、食品ロスやごみ削減に配慮した食べ物を選ぶ、衣類をリユースするなど、私たちにもできることがあります。
(生活文化部・菊地弘志)

 ケースに入ったパンや切りたてハム、色とりどりの総菜やピクルスを入れたバットがずらり並ぶ。仙台市青葉区通町の料理教室「紫山のごはん会 分室」で月1回開かれる「量り売りマルシェ」。宮城、山形両県から毎回8、9店が出店する。買い物客はふた付きの容器やエコバッグを持参し、食べきれる分だけ購入する。

 マルシェは2019年6月に仙台市のフードクリエーター佐藤千夏さん(56)ら3人が、食品ロスやごみが出ないシンプルな売り買いを目指して始めた。
 売る側は包装にかかる手間や経費が省け、素材そのものの魅力を提供できる。買う側もその分、価格が安くなったり、さまざまな食材を少しずつ試せたりする。出店者と消費者の双方にメリットがあるという。
 新型コロナウイルスの影響で一時休止したが、昨年6月、3密を回避するため予約制に切り替えて再開。思わぬ効果が生まれた。
 主催者の1人、大崎市でハム工房を営む高崎かおりさん(49)は「事前に来場者数が分かるので、用意する量が見通せて売り残しがなくなった。客側も必要な分量を見積もって買うようになった」と話す。

 大量生産、大量廃棄を見直すエシカル消費の輪は、ファッションの世界にも広がっている。
 いわき市のNPO法人「ザ・ピープル」は1990年から古着のリサイクルに取り組む。回収量は年間約260トンに上り、保存状態の良い物は市内の直営3店舗で、リユース品として販売する。支援物資として海外にも送る。洗濯済みの古着が、遠方からも宅配便で送られてくる。
 理事長の吉田恵美子さん(64)は、東日本大震災を境に消費者意識の変化を実感したという。「支援物資を分け合い、互いに助け合って生活を回していくことを、身をもって体験した。ぜいたくな消費は環境に負担を掛けると思うようになったのではないか」
 最近人気を呼んでいるのが、衣類の穴や染み、ほつれなどをカラフルな色糸で繕う欧州伝統の「ダーニング」だ。
 宮城県内でダーニング講座を開く「AYATORI*miyagi(アヤトリ ミヤギ)」代表の八重咲知香さん(53)=仙台市=は「傷んだ服の跡を元通りにするのではなく、お絵描きして足し算する感覚だ。ルールは特になく、服を育てるような気持ちで一点物に仕上げられる」と説明する。
 くたびれたとはいえ、お気に入りの品を残したい気持ちは誰にでもあるのでは。「衣類に新しい命を吹き込んでやれば、新たな目で見られる。愛着が湧き、買い替えの前に吟味するようになる」と八重咲さんは話す。

■作り手への共感、基準に

 エシカル消費に詳しい尚絅学院大の玉田真紀教授(デザイン、服飾文化)に、消費者は日頃、どんな点を意識して商品を購入すればよいかアドバイスしてもらった。

 近年、大量生産や大量廃棄、過酷な環境で働く労働者の健康被害が深刻化し、生産者側の「つくる責任」とともに、消費者に対して「使う責任」が問われている。
 社会的課題の解決を図るために、フェアトレード(公正な貿易)やリサイクル、動物愛護、地産地消、障害者支援、被災地支援などの取り組みが生まれている。こうした品を選んで買い物することで、消費者は貢献できる。
 「倫理的」を意味するエシカルという言葉に堅苦しい印象を抱きがちだが、関わり方は人それぞれ、十人十色でいい。作り手の思いを知り、ファンとして支える物語性が大切。「頑張ってほしい」「作り続けてほしい」との思いを表現したい。
 「自分だったら何に共感できるか」という基準で選ぶといい。その過程で自分の価値観に気付くきっかけになり、イベントやウェブなどで同じ思いを持つ人とつながることもできる。
 「安さ」「便利さ」には、社会や環境への負荷と影響が伴う。商品を買う際は、長く使えるかどうか見定めたい。価格だけでなく価値にも目を向けてほしい。

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