どこでもサイエンス 第206回 スマート望遠鏡「eVscope」は40万円のモバイル天文台だ!(後編)

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前回に引き続き、スマート望遠鏡eVscope(約40万円)の試用記でございます。

都市郊外の住宅地&2時間で、どこまで宇宙が見えちゃったかをご紹介いたします。

ちなみに、引き続き試用機提供は、+Styleさんです。

望遠鏡で星を見るのは、楽しいものです。のぞくと、星は色づき、目には見えない星が輝き、月の巨大なクレーターが目前にせまり、土星の環のある「ほんまかいな」造形をチェックできます。望遠鏡から目を離すと、そこには現実がある。のぞくと宇宙がある。まあ、そのギャップがすごいので、望遠鏡で星を見る天体観察会や天体観望会はどこでも人気ですな。なお、これは5万円くらいの望遠鏡で十分できます。たとえば、埼玉のビクセン社のポルタIIなどですな。仕事でも使いますが、使い易く、天体観察会では、参加した子供でもすぐ使い方を覚えて、勝手に星を見てあそんでます。頼もしいですな。

ただ、この望遠鏡もセッティングは面倒です。慣れていても、天体観望会の30分前には箱から取り出し、ゴソゴソと準備し、部品を組み付ける必要があります。ネジを緩めて、締めて、パーツを取り付けてという感じになります。

また、どこにどんな星が見えるのか、事前に確かめておく必要がありますな。まあ、月なら見りゃわかるってなもんですが、惑星やら星団やらだと、ちょいと下調べが必要ですし、地図ならぬ星図を用意し、探し方のルートを確認しないといけませんって登山かよ! そんなことで2時間だと、下準備からはじめて片付けるまで、実際に観察できる天体はせいぜい3-4個なんてことはざらでございます。えっと月と、惑星と、あかるい恒星と星団ってところでしょうか。

これが天文台だと何かと楽なんですな。まず、望遠鏡は作り付けなので、セッティングはしないでよい。星図は部屋に備えてあり、なんとなればPCソフトで表示する。望遠鏡も星図ソフトで「この星に向けろよ」と指示を出すだけなんて感じです。まあ、何百万円とか何千万円とか出せばな。小さな会社の社長さんでそんなマイ天文台持っている人いますよ。えーなあ。

eVscopeは、そんなマイ天文台の夢を40万円(税込)でかなえてくれるものなのですよ。ええ、気合いが入った機材でゴリッゴリにテクニック駆使したものにはかないませんよ。しかし「さあ、ちょっと星を見るかな」「あーおもしろかった」の2時間で、かなりのことができるのでございます。この連休は意外と晴れ間がなかったのですが、時間があいた2時間でやれたことを見ていただきましょう。

なお1点だけ。望遠鏡とスマホの充電だけは事前に済ませていましたよ。

決意・運搬・セッティングまで(10分間)

夜、晩ご飯を食べ終わって「あ、今日は星を見るんだ」と思い立ちました。(1)望遠鏡の入ったリュックを担ぎ、(2)玄関から出るときにちょっと肌寒かったのでウルトラライトダウンを羽織り、(3)近所の公園まで200mほど歩きました。ここまでで5分。

(4)リュックを下ろし、。望遠鏡を取り出せるようにし、三脚を開いて設置。(5)望遠鏡をのせてネジを締め付けスイッチオン。(6)スマホと望遠鏡をWi-Fi接続(望遠鏡そのものがアクセスポイントになります。パスワードなし)。(7)スマホのアプリの操作で望遠鏡をナナメに傾け、(8)キャップをあけて、(8)「フィールド検出」で、望遠鏡の設定が終了です。ここまでで10分かかってません。

まず何か1つ見てみるぞ

セッティングができれば、(1)スマホアプリのメニューから見たい天体を選びます。最初は確実にわかる明るい星がいいので、Spica(おとめ座の1等星スピカ)にしましょうか。標準では地平線の上にある天体しか表示されません。選ぶと(2)天体のデータが表示されます。(3)移動を押します。すると望遠鏡が静かな音をたてながら動きます(静かです。近所迷惑にまずらならないのがよい点!)。

え? 星図? eVscopeにデータで内蔵です。ルート? eVscopeが計算して勝手に向けてくれます。外付けのPCとか不要です。まさに天文台です。すげーぜ。

そしておよそ1分後! (4)ちゃんとスピカ(Spica)に向けて見えましたよ!! スマホの画面とeVscopeののぞき口に同時に表示されます。のぞいてもいいんですが、スマホで見ちゃうほうが楽ですよね。この星は1等星の中でも特別青い星の1つです。その色の感じもわかりますな。

(5)さらに、エンハント・ビジョンのボタンを押すと、画像がみるみる改善されていきます。これが楽しい。画像を重ね合わせることで、ざらっとしたノイズな感じがなくなっていくんですな。美しい! ただ、色味がちょっと淡くなる感じ。これがeVscopeの弱点で、明るい星はかえって見にくかったりします。

さあ、どんどん見てみるぞー

さて、これでうまくいったので、気をよくしてどんどんいろんな天体を見て参ります。途中でスマホのアプリがフリーズすることもあるのですが、アプリだけ再起動すればOK。数秒間で大丈夫。望遠鏡のWi-Fiとスマホがつながらなくなることがありますが、20秒ほどまてばおおむね復帰します。だめならつなぎ直すのでも大丈夫。

また、街灯などの方を向くと望遠鏡がバグって色味がおかしくなることがあります。そういうときは望遠鏡の再起動をするといいですが、まあ2分もいりません。

ということで、途中でそういう寄り道をしながら楽しんだのが次の通りでございます。

1. さそり座の1等星アンタレス

太陽の10倍近くも重い恒星が、一生の最後に超膨張した「赤色超巨星」です。赤い星は基本くらいのですが、こいつらは例外。大きさで明るさを稼ぎ、太陽の何万倍も明るいため、1000光年彼方からも見える宇宙の灯台ですな(太陽だと50光年で肉眼で全く見えなくなってしまう)。

こういうウンチクを知りながらやると楽しいのですが、スマホアプリでは、一部天体についてはこのウンチクも天体セレクトの時にでてくるのでございます。いたれり尽くせりでございます。アンタレスではデータだけでウンチクないですけどねー。この辺はぜひアプリのアップデートで強化してほしいですな。

さあ、どんどん行きましょう。

2. M51 子持ち銀河

うわー、これが見えるか! です。北斗七星の近くにある銀河です。図鑑の定番です。

左が導入したとき。右がエンハンスト・ビジョンです。このぐるぐるが見れるのは、天体趣味をちょいとでもかじったことがあれば、ウワー! です。もうコレ見えただけで満足。

さあ、数が多いので、あとはコメント薄めにしますよ

3. M82 葉巻銀河

銀河なのですが、衝突したあとっぽく、グチャッとなっているのが印象的です。これも図鑑の常連。

4. M81 うずまき銀河

M82の近くにある銀河です。こいつがM81をぶっ壊したという話もありますな

5. M13 球状星団

天の川銀河の中にある100万個の星の集団です。すげえ、でかい。

6. M92 球状星団

M13とともにヘルクレス座にある球状星団。年齢は100億歳です。太陽は50億歳。

7. M57 リング星雲

織り姫様のあること座にある惑星状星雲です。星が死んだ後、外層のガスが宇宙にひろがっていき、そのガスが残った星の芯からの紫外線で発光しています。いうならば宇宙のネオンサインか蛍光灯か。これ、この色が見えちゃうのがすごいんですよ。ふつうに望遠鏡で見ても色は全くわからないですよ。感動的です。

8. M14 球状星団

低空にあるのをとらえたら、街灯の光がさしこんでこんな感じに。でも見えるのがスゴイ。

9. M104 ソンブレロ銀河

おとめ座にある銀河です。レンズみたいな様子が印象的。ちなみにMなんとかは、メシエさんが作ったカタログのナンバーなんですが、これはM110までにするためにあとで付け加えられたものです。くわしくはググってね。

10. アンテナ銀河

真ん中のちょい右の方に、Cの字のシミみたいに見えるのがそうです。2つの銀河が衝突している様子。

11. M83 南の渦巻き銀河

M51と同じぐるぐる銀河。複雑な形が印象的。

12. M90銀河

13. M100銀河

14. M99銀河

いずれも、おとめ座銀河団にある銀河。いずれも距離は5000万光年くらい。eVscopeはえらい遠距離を見ることができるのでございます。

15. M4 球状星団

比較的近距離にあり、でかく見える球状星団。映える天体。アンタレスのそばにあります。ふつうにみるならこれが見映えがよくていいかもー。

16. M5 球状星団

M4を見たので5も見ようというくらいでチェック。M4より3倍も遠くにあるので小さく見える。

さて、このあと5分くらいで片付け、撤収をしたわけです。

2時間=120分間のうち、準備と撤収で15分。ハングアップや、SNSで遊んだりでなにやらで30分くらいロスしましたから、75分弱で15天体。まあ、楽しかったですよ。

また、スマホの映像をプロジェクターとかで映せば、大勢で見られるし、実はスマホを10台くらいまでは同時接続できますし、お手軽でございます。しかし、時代やなあ。

ということで、ちょっと試用したら飽きるかとおもったら、ほしくなってしまった。しかし40万円かーーーー。

東明六郎

しののめろくろう