ケーキ入刀→まき割りに 趣味仲間が2人の門出祝福「キャンプウエディング」に密着

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パーティーで指輪を交換する渡部悠介さん(左)と寺岡美加さんに拍手を送るキャンプ仲間たち(アーススタジオ提供)=香美町村岡区大笹

 新型コロナウイルスの感染拡大で結婚式を挙げるカップルが減る中、新郎新婦が、晴れ姿を写真に残す「フォトウエディング」が人気を集めている。4月中旬、兵庫県香美町村岡区大笹のキャンプ場「森とぼくの休日」では、キャンプ好きの新婚夫婦がオリジナルのフォトウエディングに臨んだ。職場や家族、親戚などの人間関係より、共通の趣味のつながりを重視する若者たちの「キャンプウエディング」を取材した。(金海隆至)

 静まり返った森の中。新郎が「こういう所でするキャンプが大好き」と話し、新婦は「写真の仕上がりが楽しみ」とカメラマンに向けて笑顔を見せた。ブーケを手に見つめ合う。幸福感がファインダー越しに伝わってくる。

 ハチ北高原スキー場(同町村岡区大笹)のゲレンデにあるキャンプ場。2人は併設のホテル「アオイトリ」に宿泊し、大阪市のフォトスタジオ「アーススタジオ」が準備した衣装に着替えて、教会での挙式などをイメージした写真や動画の撮影を行った。

 ともに大阪府貝塚市在住で小学校教諭の渡部悠介さん(27)と寺岡美加さん(28)=伊丹市出身=は、2年ほど前からキャンプを楽しむように。テント周辺に自宅でも愛用するアンティーク家具やインテリア、ランタンなどを並べる独自の空間演出が、写真共有アプリ「インスタグラム」で注目を集める。

 今年1月に入籍し、結婚式は挙げなかった。寺岡さんは「気に入った小道具を使い、キャンプ場でウエディング写真を撮るのが理想だった」と話す。

 香美町の同キャンプ場を初めて訪れたのは昨年夏。オフシーズンのスキー場の緑豊かな景観やスタッフの温かな接客にすっかり魅せられた。広報の担当者にフォトウエディング企画について相談すると、アーススタジオがキャンプ愛好者向けにフォトウエディングの商品化を検討していることが分かった。そして、2人がモデルとなって先行実施することが決まった。

 衣装のレンタルや花などにかかった経費は、スタジオとキャンプ場が大半を負担。2日間、雨の中での撮影となったが、2人はとりわけ、野外からホテルに会場を移して開かれたパーティーに感激したという。

 会場には米国製のテントや小道具が飾られ、その前方に設置されたテーブル席を20~40代の男女約10人が囲んだ。いずれもインスタグラムを通じて交流を深めた兵庫や大阪、石川、岐阜などのキャンプ仲間だ。

 互いにアカウント名で呼び合うなど詳しい素性は知らないが、打ち解け合った友人たち。新郎が新婦を喜ばせようと招いたサプライズゲストだった。

 大きな拍手に包まれて入場した新郎新婦は、厳かに指輪を交換。初めての共同作業ではおのを手にしてケーキ入刀ならぬ「まき割り」を披露し、「キャンプライフを永遠に楽しむ」ことを誓い合った。

 出席者は和やかな雰囲気で談笑を楽しみながら、コーヒーセットや、コンパクトに収納できるシェラカップなど思い思いのキャンプ用品を2人に贈り、最後はフラワーシャワーで送り出した。

 参加者の1人で、ビュッフェ形式のキャンプ料理に腕を振るった神戸市出身の看護師(31)=大阪市=は「仲間が単純に楽しめるキャンプウエディングを自分も将来やってみたい。普通の結婚式と違って、堅苦しくなく、会場の飾り付けもおしゃれ」と屈託なく話した。

 “ウィズコロナ”の時代に、趣味や趣向が同じ仲間に2人の門出を祝福してもらうことを選んだ。渡部さんは「ゲストの人たちが来てくれなかったら、今日という日はなかった」と感謝の気持ちを表現。寺岡さんは「会いたい人とも会いにくい時代に、大切にしたい、つながりたいと思う人たちとウエディングを開くことができて光栄」とかみ締めるように話した。

■スキー場利用、冬は雪中キャンプ

 キャンプウエディングの舞台となった「森とぼくの休日」は、ハチ北高原の大自然を満喫してもらおうと、昨年7月に開業した。スキー場のゲレンデ周辺に「草のひろば」▽「池のほとり」▽「森のすきま」▽「雪のこだち」とロケーションに応じたキャンプ場4区画(最大計26組)を設け、通年で営業している。

 併設のホテル「アオイトリ」でカフェやトイレ、お風呂が利用でき、冬には全国的に珍しい“雪中キャンプ”を楽しめる。

 オーナーは、家族でアオイトリを営む西谷大我さん(29)。記録的に雪が少なかった2シーズン前、新型コロナウイルス禍も重なって収入が激減し、冬季依存の経営からの脱却を決めた。「冬のハチ北から『アウトドアのハチ北』へ。地元を盛り上げたい」と展望を描く。

 西谷さんの妻の姉で広報担当の村中志帆さん(30)は「今後もキャンプウエディングを希望する人がいたら、相談に応じたい」と話している。

 問い合わせは「森とぼくの休日」TEL0796.96.0757