ソフトバンクが「カーボンニュートラル2030宣言」 全社でのCO2削減目標初めて示す

ソフトバンクは11日、事業活動で使用する電力などによる温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル2030宣言」を発表した。同社が全社でのCO2削減量の目標を示したのは初めてで、国の掲げる2050年脱炭素社会の実現を後押しする考え。携帯電話基地局を中心とする全設備の電力を順次、再生可能エネルギーに切り替えるとともに、次世代電池の実用化に向けた研究開発にも力を入れる。(廣末智子)

同社の事業活動に伴う温室効果ガスの年間排出量は、CO2換算で、平均的な一般家庭の約25万世帯分に相当する約68万トン(2019年度実績)。これを2030年に実質ゼロにする。

同社によると、総消費電力の半分以上を占めるのが、2020年3月末時点で全国23万カ所にある携帯電話基地局だ。これに関しては2020年度から子会社のSBパワー(東京・港)から購入した、化石燃料由来の電力ではないことを証明する「非化石証書」を活用した「再生可能エネルギー実質100%」の電気の使用比率を高めている。2021年度はこれを50%以上、2022年度には70%以上に引き上げる見込みで、基地局以外のすべての施設や設備における使用電力についても順次、SBパワー社の実質再生可能エネルギーへの切り替えを進める。またそれと同時にAI(人口知能)やIoTなどの最先端テクノロジーを最大限に活用した省電力化を徹底する。

さらに再生可能エネルギーに関しては、最終的に、太陽光や風力による自然エネルギーの開発を手掛けるソフトバンクグループの子会社であるSBエナジー(東京・港)が発電する電力を直接調達することも検討している。

一方、一刻も早い次世代電池の実用化にも力を入れる方針で、来月設立予定の、世界中のさまざまな次世代電池の評価・検証を行う「ソフトバンク次世代電池Lab.(ラボ)」を通して、研究開発を推進する。さらにHAPS(成層圏通信プラットフォーム)をはじめとする次世代通信システムなどへの次世代電池の導入も検討中で、環境負荷の少ないインフラの実現を目指すという。

ソフトバンクグループは東日本大震災に端を発した福島第一原発の事故をきっかけに、グループ代表の孫正義氏が自然エネルギーの普及を目指し、2011年10月にSBエナジー社を創設するなど、いち早く電源開発に力を入れてきた経緯がある。カーボンニュートラルについては今年1月、傘下のZホールディングスが、その中核企業であるヤフーとともに、2023年度中にデータセンターなど事業活動で利用する電力の100%再生可能エネルギー化の早期実現を目指す「2023年度100%再エネチャレンジ」を宣言していた。もっとも今回、ソフトバンクが全社でのCO2削減目標を初めて示し、「カーボンニュートラル2030宣言」を行ったのには、日本政府の2050年脱炭素社会実現に向けた動きを後押しする意味合いが強く、同社の広報本部は、「日本政府が目指す2030年に2013年度比で温室効果ガスを46%削減するという目標および2050年までの脱炭素社会の実現にソフトバンクとして貢献していく」と話している。

また同社は昨年5月、「すべてのモノ、情報、心がつながる世の中を」をコンセプトに、「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」など6つのマテリアリティ(重要課題)からなる独自のSDGsおよびサステナビリティ戦略を発表しており、今回のカーボンニュートラル宣言を通じて、広報本部によると「テクノロジーの力で地球環境へ貢献する意味合いからもSDGsの取り組みをさらに強化していく」方針だ。

一方、ソフトバンク以外の大手携帯2社の温室効果ガス排出削減目標は、現状では、NTTドコモが2030年度までに2018年度比で50%削減する目標を示し、企業の温室効果ガス削減目標が科学的な根拠と整合したものであることを認定する国際的なイニシアティブであるSBT(Science Based Targets)イニシアティブから、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるための科学的根拠に基づいた削減目標であるとの認定を受けているほか、auを展開するKDDIが2030年度のKDDI単体(国内)のCO2排出量を2013年度比で7%削減する目標を示している。

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