NASA小惑星探査機「オシリス・レックス」がベンヌを出発、地球への帰路に

【▲ 小惑星ベンヌを離れる小惑星探査機「オシリス・レックス」を描いた想像図(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間5月11日、小惑星ベンヌからのサンプル採取に成功した探査機「OSIRIS-REx(オシリス・レックス)」が、いよいよ地球への帰路についたことを発表しました。

「アメリカ版はやぶさ」とも呼ばれるオシリス・レックスは2018年12月にベンヌに到着し、1年後の2019年12月には2か所の採取地点が決定しました。日本時間2020年10月21日には採取地点「ナイチンゲール」でのサンプル採取が実施され、採取装置先端のコレクターヘッドには目標の60グラムを大幅に上回るサンプルが集められたと判断されています。オシリス・レックスは地球へ帰還するための適切なタイミングを待ちつつ、ベンヌの最後の観測を行っていました。
[()

【▲ サンプル採取地点「ナイチンゲール」付近を採取前と採取後に撮影した画像。赤い丸で囲まれた岩はサンプル採取の影響で約12メートル移動したとみられている。赤い×は採取地点の位置を示す(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona)】

日本時間2021年5月11日5時23分、オシリス・レックスは7分間に渡るメインエンジンの全力噴射を実施し、時速1000km近い相対速度でベンヌを出発。地球への2年半近い旅路が始まりました。オシリス・レックスが地球に帰還するのは太陽を2周した後の2023年9月24日とされており、コレクターヘッドが収容されたサンプル回収カプセルは大気圏への再突入後にユタ州の試験訓練場で回収される予定です。

サンプル回収カプセルはNASAのジョンソン宇宙センターに設置されているキュレーション施設へと輸送されます。取り出されたサンプルは米国内だけでなく、小惑星サンプルの一部を交換する協定を結んでいる日本をはじめ、世界各国の研究者に配布されます。また、分析手法や技術の向上を見越して、サンプル全体の4分の3は将来のために保管されることになっています。

【▲ コレクターヘッドをサンプル回収カプセルの所定の位置に運んでいる様子(左)と、コレクターヘッドがロックされたところ(右)(Credit: NASA/Goddard/University of Arizona/Lockheed Martin)】

いっぽう、オシリス・レックス本体は大気圏に再突入せず、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」と同様に、カプセルの分離後に地球を離脱することになっています。NASAによるとオシリス・レックスにはまだ十分な燃料が残っており、地球離脱後の拡張ミッションについて2021年夏に運用チームが検討を行うとのことです。

関連
小惑星ベンヌのサンプル採取は2020年8月。地点は「ナイチンゲール」に決定
NASAの小惑星探査機オシリス・レックスがサンプル採取を実施!
十分なサンプルが得られたと判断。NASAが小惑星探査機オシリス・レックスの最新画像を公開

Image Credit: NASA/Goddard/University of Arizona
Source: NASA
文/松村武宏

© 株式会社sorae