紡ぐ連携、暮らし見守る 第7部 支え合う未来へ (5)まちづくり(上)

「まちの保健室」の職員(左端)とともに折り紙を折るサロン参加者=4月12日、三重県名張市内

 折り紙を折り、貼り合わせる。三重県名張市の市民センターで開かれた高齢者サロン。集中して作業を進める住民に交じって、「まちの保健室」の職員も手を動かしていた。

 まちの保健室は、名張市地域包括支援センターの支所のような存在だ。市内15カ所、小学校区に1カ所の割合で点在する。

 看護師や介護福祉士など有資格者が2~3人常駐し、子育てから介護まであらゆる生活相談に応える。福祉サービスの申請代行、民生委員と連携した1人暮らしの高齢者訪問、要介護申請の認定調査など、業務の幅は広い。

 住民主催の活動にも積極的に参加する。「健康なときから顔見知りの関係ができることがすごくメリットなんです」。保健室に勤務する看護師三永拡子(みつながひろこ)さん(46)は、一緒に活動する意義を語る。

 三永さんは鴻之台・希央台まちの保健室に勤務する。人口約7万7千人の名張市内で、新興住宅地やアパートが建ち並び、最も子どもが多い地域にある。2011年4月の開所当初からのスタッフだ。

 住民とともに活動し、地域支援のネットワークづくりを重視する。保健室でも月2回、子育てサロンを企画。ベビーマッサージやリトミックなど、魅力的な内容で参加を促す。イベントを楽しんでもらう間、気分が落ち込んでいないか、様子が変わっていないか、相手の話にとことん耳を傾ける。

 「何となく話しているうちに、相談になっていったりする。普段から情報を集めることで、何かあったときの対応もできるんです」

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 三永さんはもともと、病院の看護師だった。地域訪問などやったこともない。「やる前は、インターネットで靴のそろえ方とか調べました」と笑う。

 利用者には、何年も掛けて向き合い続ける人もいる。精神的に不安定で、一日に何度も電話を受けた。ひたすら耳を傾け続け、落ち着いて話ができる関係になった。

 相手によっては、すぐに答えを与えず一緒に悩むこともある。実際に子育てや介護をするのは相談者本人。対話を重ねることで、自立への道筋を探ってきた。「何回か一緒に悩んでいるうちに、自分で自分の悩みにアドバイスするところまで持っていけたら御の字です」

 子育て中の母親から「ここはノーメークでも来られる」と言われたこともある。「心も一緒やと感じてくれているのかなと。ありがたいです」と話す。

 「電話するとか、市役所に行くことができる人は力がある。それさえできない人、自分が困っていることに気付いていない人もおられる」。保健室が紡ぐこまやかなつながりが、そうした人を支えている。

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 まちの保健室だけで問題を解決できるわけではない。より専門的な対応が必要な場合は、医療機関や社会福祉法人など別の専門機関につなぐこともある。

 その連携の輪の中に、住民の組織もある。暮らしやすい地域を目指し、住民同士が支え合う組織。名張市のまちづくりの大きな特徴が、そこにはある。

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