<いまを生きる 長崎のコロナ禍> 新成人パティシエ 古里思い腕磨く 第4波で帰省できず 長崎出身の石本玲菜さん「地元で店開きたい」

 この春、石本玲菜(れいな)さん(20)は東京で社会人として歩み始めた。地元長崎市で迎えるはずだった1月の成人式は新型コロナウイルスの流行で延期され、5月もオンライン開催に。そもそもパティシエの仕事が忙しく、これだけ感染が広がると帰省できそうにない。今は腕を磨くことに専念する。古里を思いながら。

 長崎市内の高校を卒業後、大阪の専門学校で製菓を学び、4月から町田市のカフェ併設の洋菓子店で働いている。
 最後に帰省したのは1月。成人式の延期は直前に知ったが、既に新幹線のチケットを入手していた。祖母に買ってもらった振り袖を着るのは半ば諦めていた。もし自分が既に感染し無症状だったら-そう考え、実家で10日ほど「自主隔離」してから友人と会った。せっかくなので、長崎を離れる数日前、写真館で晴れ着姿を撮影することに。その足で、100歳の曽祖父に会いに行き、披露した。「良かったね」。祖父母も一緒に喜んでくれた。
 成人式が再設定されたのは5月のゴールデンウイーク(GW)。まだ仕事に慣れず、しかも繁忙期。「自分みたいに帰れない社会人もいるだろうな」と思った。それに「(仮に感染していた場合)うつした時の責任が取れない」。結局、成人式はオンライン開催となった。
 今思えば、学生最後の春休みに帰省しなかったのが心残りだ。卒業式や引っ越しでどうしても自主隔離の時間が十分に取れなかった。「ただただ帰りたかった」。コロナ禍にあらがえず、悔しさが込み上げる。
 今の職場はインスタグラムで知り、店の雰囲気や商品へのこだわり、そして味に心を打たれた。スタッフの募集はしていなかったが、頼み込んで採用してもらった。仕事は楽しく、丁寧に指導してくれる先輩にも恵まれた。ただ、同期はおらず、感染第4波の渦中で会える友人もいない。職場と自宅、スーパーを自転車で行き来するだけで、家から一歩も出ない休日も少なくない。仕事で疲れたり落ち込んだりすると長崎を思いだす。
 次はいつ古里に戻れるか分からない。だが今はパティシエとしての技術や知識を蓄えるとき。「地元で自分のお店を開きたい」という目標を胸に、今日も菓子と向き合う。

成人式には参加できなかったが、晴れ着姿を100歳の曽祖父(左から3人目)ら親族に披露できた=長崎市内(石本さん提供)

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