ファイターズ・レジェンドの声を聞け! 田中幸雄氏が低迷する古巣に緊急提言

田中幸雄氏

生え抜きのレジェンドが緊急提言だ。日本ハムは2016年に二刀流・大谷翔平(26=現エンゼルス)を擁して日本一になって以降、4季連続で優勝チームから13ゲーム差以上離され、今季は首位楽天と5ゲーム差(13日現在)ながら最下位に沈んでいる。そんな現状に「やはりOBとして寂しい」と訴えるのが、ファイターズ一筋で22年間の現役生活を送り、07年に通算2000安打を達成した田中幸雄氏(53)だ。低迷する古巣への熱い思いを前後編の2回に分けてお届けする。

04年に北海道へ移転したファイターズは、16年までの13年間で2度の日本一を含む5度のリーグ優勝を成し遂げました。限られた予算の中で最大限の成果を出してこれたのは、他球団に先駆けて05年に導入した選手の能力を多角的に数値化する独自の「ベースボール・オペレーション・システム」によるところが大きいと言えるでしょう。

しかし、大谷がエンゼルスへ移籍した17年以降のファイターズは4シーズンで3度のBクラスと低迷しています。3位だった18年も優勝した西武に13・5ゲームの大差をつけられ、昨季はソフトバンクと20ゲーム差の5位に沈みました。

もちろん原因を一つには絞れません。今季に関していえば、エースの有原(現レンジャーズ)が抜けた穴も大きいでしょう。一つ言えるのは、若手の伸び悩みがチームの低迷を招いているということ。なかでも象徴的なのが清宮幸太郎です。

甲子園のスターも気がつけば4年目。まだまだ温かい目で見守ってあげるべきなのでしょうが、同級生のヤクルト・村上宗隆は球界屈指のスラッガーに成長し、ロッテ・安田尚憲も昨夏から託されている4番の座が板についてきたことを考えれば物足りなさを感じるのも事実です。先日、チームで新型コロナウイルスのクラスターが発生した際に10人が出場選手登録を抹消される中でも、入れ替え要員として清宮の名前は挙がりませんでした。

17年のドラフト会議で7球団が1位指名で競合したスラッガーが伸び悩んでいる原因は何なのか? 新型コロナ禍にあって本人を取材することもできないので、以下は外から見ていて感じた印象になります。ご了承ください。

練習を見ていても、打撃に関しては非凡なものを持っています。ツボにはまったときの飛距離も申し分ありません。しかし、今季は開幕から二軍暮らしで、成績も打率2割3分7厘で2本塁打。これは前々から感じていることですが、体幹の弱さに原因があると思われます。

投手というのは一、二軍に関係なく、相手打者に自分の打撃をさせないように投げてきます。自分の理想のフォームで打てることの方が珍しいぐらいで、安定した成績を残すために必要なのは、崩されながらもボールを的確なポイントでとらえてはじき返す力です。短打を重ねるアベレージヒッターも同様で体幹、つまり軸がしっかりしていなければ力強いスイングはできません。日米通算4367安打のイチローも、オリックス時代から試合前のフリー打撃では力強いスイングを心掛けて柵越えを連発していたものです。

今回は伸び悩む若手の象徴として知名度の高い清宮の名前を挙げさせてもらいましたが、もちろん一選手の問題にとどまりません。ファイターズにとって深刻なのは二軍の低迷なのではないかとも思っています。

=後編につづく=

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