5月は例年、冷房や暖房もいらず、過ごしやすい日が多い。だが、今年は全国的に平年より梅雨入りが早まっており、既にじめじめとした蒸し暑さを感じている人も多いだろう。これからの長雨の季節も、実は熱中症に注意が必要なことをご存じだろうか。梅雨の晴れ間には熱中症の救急搬送が急増する。まだ暑さに慣れていない体に、夏の予備軍的な蒸し暑さが襲いかかるためだ。
季節の変わり目は風邪をひきやすい。夏の始まりは熱中症になりやすい。本格的な夏が来る前に「夏仕様」の体づくりをお薦めしたい。(日本気象協会、気象予報士=安野加寿子)
▽熱中症の症状とは?
熱中症という言葉は耳にしたことがあっても、どんな症状なのか、具体的に把握している人は意外と少ないのではないだろうか。
熱中症とは、高温な環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻したりして、発症する障害の総称だ。最悪の場合「死に至る病気」である。
症状はさまざまだ。例えば「手足のしびれ」や「立ちくらみ」など軽症なものから、「吐き気」「体のだるさ」など中等度のもの、「意識がなくなる」「体のひきつけ」など重症なものまで。知らずにいると「もしかして熱中症かも?」と気付けないかもしれない。
▽6月の搬送者数は4500人
7月の梅雨明け後から8月のお盆明けまでが、熱中症による救急搬送者数や死亡者数が最多となる時期だ。が、近年は地球温暖化などの影響により、6月も熱中症による死傷者が多いことが分かっている。長雨で気温がそこまで高くない梅雨シーズンも、梅雨の晴れ間にグンと気温が上がる際に、熱中症になりやすいのだ。
消防庁による熱中症搬送者数・死亡者数の調査では、2016~20年の5年間、梅雨シーズンの6月でも、毎年約4500人が救急搬送されている。特に昨年6月は、全国的に気温が高かったため、救急搬送者数は6336人となり、10年の調査開始以来2番目に多い数字となっている。
▽熱中症にならないために
では、今やるべき熱中症対策とは何だろうか。もちろん、真夏に重要な水分補給はこの時季も大事だが、連日暑いわけではない今、まずは体を暑さに慣れさせることが大切だ。
そのためにできる三つの方法をお薦めしたい。
(1)軽めの運動(ウオーキング・ジョギング・サイクリングなど)
(2)筋トレとストレッチ
(3)湯船につかる入浴
どのぐらいやればいいかそれぞれの目安は以下の通り。
(1)軽めの運動は1日30分程度、週3~5回
(2)筋トレとストレッチは1日30分ほどを週5回以上
(3)入浴は2日に1回、適度に汗をかく程度
コロナ禍で私たちの生活は大きく変わった。新しい生活様式により、外出の機会が減った。暑さに自然に慣れるのを待つのではなく、自発的に暑さに体を慣れさせる必要がある。まずはできることから始めてみてはいかがだろう。
一点だけ注意事項を。数日暑さから遠ざかると、体は暑さを忘れてしまう。5月、6月の涼しい日も、継続的に行うことが大切だ。詳しくはホームページ「熱中症ゼロへ – 日本気象協会推進」を参照ください。