<いまを生きる 長崎のコロナ禍>余剰ワクチンどうすれば 悩む医療機関、自治体は工夫も 長崎県内

 医療従事者と高齢者に対する新型コロナウイルスワクチンの接種が長崎県内でも進む中、予約キャンセルなどで余るワクチンの取り扱いに医療機関や自治体が頭を悩ませている。米ファイザー製は解凍後、短時間で使い切る必要があり、医療に従事していない家族や職員に充てるケースがある。現場には「廃棄は避けなければならないが、急な対応は難しい」との声がある一方、県などは「できる限り優先度の高い人に」と求める。
 感染者を受け入れている長崎医療圏の基幹病院の一つ、済生会長崎病院(長崎市)は3月15日から勤務医や看護師ら約500人の医療従事者に接種を開始。1回も廃棄することなく、5月14日に完了した。

米ファイザー製ワクチン。余った場合の取り扱いに医療機関や自治体が頭を悩ませている=県内

 ただスムーズに進んだわけではない。3月中旬、体調不良や不安などを理由に急なキャンセルでワクチンが余った。近くの医療機関に連絡し提供することも想定していたが、「来てもらうのが難しい時間帯だった」(同院担当者)。自院職員の家族なら、持病の有無も分かる上、引き受けてくれる可能性が高い-とみて数人に接種した。担当者は「貴重なワクチンを廃棄するのだけは避けようという現場の判断。感染者が急増し、どこの医療機関も多忙を極めている。行政が(余剰分の接種先)リストを作って対応してくれたら悩まずに済むが…」と話す。
 国が作成した接種の手引きでは「別の者に対して接種することができるような方法について、各自治体において検討を行う」とある。
 東彼川棚町は余剰分を接種会場にいる町職員に割り当てている。事前に意向調査し、「打ってもいい」と答えた83人をリスト化。町担当者は「会場の職員も接種を済ませていれば、お年寄りの安心感につながるのではないか」とみる。山口文夫町長は町の集団接種者「第1号」になり、公務の合間に会場に出向いて「私も打ったが、大丈夫だった」と声を掛けている。
 一方、東彼東彼杵町は、余った場合に接種に協力してくれる65歳以上の町民を「調整枠」として募集。集団接種が終わりそうな時間帯に来てもらい、余れば接種している。
 長崎市は24日から85歳以上の接種が始まる。県や同市は余剰分であろうと、接種券を既に持つ高齢者や基礎疾患のある人など、国が定めた優先順位に従うよう医療機関に求める。同市担当者は「対象者が予約していたことを失念する場合もあれば、急に体調が悪くなる人もいるはず。労力を惜しまず準備してほしい」とする一方、リストの作成も進める方針だ。

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