社説:対北朝鮮政策 非核化交渉の継続図れ

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 米国のバイデン政権は、今年1月の発足後、対北朝鮮政策について、見直す方針を示していた。

 見直し作業は先月、完了したものの、その内容は「現実的なアプローチを追求する」などとするだけで、具体的ではなかった。

 それが、トランプ前大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が、朝鮮半島の完全非核化を唱えた2018年のシンガポール共同声明を、今後の交渉の基礎とすることが明らかになった。

 今週になって、複数の外交筋が伝えたという。関係の深い日韓両政府にも知らされている。

 前政権の声明を引き継ぐ、との意思表示である。しかし、これでは政策を見直したことに、ならないようにも思える。

 共同声明は、完全非核化に向けた努力を進めることのほかに、新たな米朝関係の樹立、恒久的で揺るぎない平和体制の構築などの項目で合意した。

 これに対し、野党だったバイデン氏ら民主党陣営が、「中身がない」「だまされている」と強く批判した経緯がある。

 それゆえ、新政権の発足後に見直しを図ったとされる。

 ところが、こうした姿勢を説明するため、北朝鮮に接触を打診したところ、一切反応がなかったそうだ。

 北朝鮮は1月の党大会で、トランプ氏と金氏の会談を、「超大国を相手に戦略的地位を誇示した」と総括している。

 会談の成果である共同声明を無視するかのような米国の出方は、容認できなかったのだろう。

 日本政府は、「政権交代を理由に米朝合意を白紙化すれば、北朝鮮は交渉意欲を失う」と、懸念していたようだ。

 北朝鮮を交渉のテーブルに着かせるためには、米国が共同声明を継承していくことが不可欠だ、との見解を示したといえる。

 完全非核化に向けた話し合いの可能性は、残しておくべきだろう。そうしなければ、拉致問題の解決を求める日本の立場も、北朝鮮に伝えられない。

 米国は今後、外交を通じて着実に成果を得て、段階的な非核化を模索するとみられている。

 北朝鮮から要請があれば、新型コロナウイルス用のワクチンを提供するなど、人道的支援にも応じる構えである。

 ただ、制裁を徐々に解除するなど、北朝鮮の要求を受け入れるのは、ミサイル・核開発をやめる具体的な動きがあってからだ。