ワクチン優遇が問題化してるのに大阪維新・府議の「感染、即入院」はなぜ報じられない? 府議会事務局も即入院を認めたのに

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大阪維新の会公式サイトより

ようやく始まった新型コロナの高齢者を対象にしたワクチン接種をめぐり、予約を求める電話が殺到するなど全国各地で混乱が起きている。

愛知県西尾市ではドラッグストア大手・スギ薬局を展開するスギホールディングスの会長夫妻に、ワクチン接種の予約枠を優先的に確保する便宜を図っていたことが発覚。それを皮切りに、全国各地で自治体首長らが高齢者の接種に先行してワクチン接種を受けていたことが明らかになり、物議をかもしている。

VIPへの優遇が論外なのはもちろん、首長の優先接種についてもいまごろになって「首長も医療従事者」という屁理屈やキャンセル分を廃棄しないために接種したなどと説明している。もちろん廃棄はもっとも避けるべきだが、キャンセル分の扱いが問題になることは以前から指摘されていたのだから、キャンセル分の扱い・優先順についてきちんと事前に公表し住民の理解を得ておくべきだっただろう。

しかし、もっと呆れたのは、大阪府の吉村洋文知事が13日、このワクチン先行接種問題について「首長だから早く、というのは違うと思う。後から発覚すれば、権力を使った不正のように思われる」などと上から目線で苦言を呈していたことだ。

呆れたのは発言内容そのものに対してではない。吉村知事はよその自治体に説教を垂れる前に、自分の党の議員の“優先入院”について説明すべきではないか。

本サイトですでに報じているように、4月27日、大阪維新の会所属の大阪府議会議員・中谷恭典氏がコロナ感染が判明して、即日、入院しているのだ。

GW前後といえば、大阪では、重症病床使用率が100%を超え、受け入れ先が決まらないため「調整中」の患者は約3300人、宿泊療養者は約1800人、自宅療養は約1万3000人を超え、自宅で死亡する人も続出している。

そんな時期に、維新の府議がなぜ、即、入院できたのか。

本サイトは5月6日に中谷府議の事務所と大阪府に取材。中谷事務所は「わからない」の一点張りだったが、大阪府議会事務局は中谷府議が「(4月)27日に入院し予定通り(5月)2日に退院。現在は自宅療養中で、重篤な状態ではない」と回答した。

また、症状については「当初は発熱症状があった」「それ以外の症状や基礎疾患の有無については把握していない」ということだった。

●中谷府議は26日まで登庁、発熱して27日に即検査、即入院 28日にはFacebookも更新 2日に退院

府のHPによると、中谷府議は4月26日の時点では登庁している。これと、先の府議会事務局の回答を考え合わせると、中谷府議は26日まで普通に仕事していて、その日の夜か27日に発熱してすぐにPCR検査を受け、すぐに結果が出て、すぐに入院したことになる。

しかも、状況から見ると、中谷氏が入院時点で重篤な状態だったとは思えない。同じく大阪府のHP には入院発表時点で〈5月2日まで入院予定〉と、最初から退院予定が記されていたからだ。重篤な状態で退院予定日を発表できるものなのだろうか。

また、中谷府議のFacebookには、感染確定翌日の28日夕方、コロナとは何の関係もない告知情報のシェアが新たに投稿されていた。

もちろん、大阪府議会事務局が把握していない基礎疾患があったり、重症に近い状態だった可能性はゼロではないが、しかし、当時もいまも大阪は重い症状でもなかなか入院できず、自宅で亡くなっている患者が多数出ているのだ。マスコミ報道でも、高齢者施設の感染者が入院できず亡くなったケース、呼吸不全でも入院できないケースなどが報道され、5月4日には入院待ちの患者が2名死亡した。

そんななかで、権力を握る維新の政治家が感染して即検査、即入院したというのは、やはり何らかの力が働いたという疑惑が出てくるのは当然だろう。

本サイトは、5月4日、この事実関係を報道した記事を配信、少なくとも維新や吉村知事は入院の経緯について納得できる説明をするべきだと指摘した。

この中谷府議の感染判明後即入院問題は、本サイトの報道後、さらに大きく広がり、ネット上では「維新特権」「維新トリアージ」などの声も上がった。

しかし、その後、吉村知事も松井一郎・大阪市長も維新も、この問題についてまったく説明していない。

当の中谷府議も、4月28日を最後に止まっていたFacebookを退院後の8日から更新しているが、コロナによる入院には一切触れず、「副首都・大阪の確立」をアピールする吉村知事のコラムが掲載された府のメルマガの告知やワイン通販の宣伝ページ、大阪維新の会の活動報告など、何の関係もない記事をシェアしている。

そのなかに、「維新の会の活動に関するデマや切り取り情報について」というサイトのシェアがあったので、中谷府議の入院に関する非難への反論でもあるのかとリンク先を見に行ったのだが、何の関係もなく、反論が掲載されているだけだった。

●マスコミが維新を追及できない理由 保健師の実名告発を報じたMBSへの松井市長の恫喝

言っておくが、優先入院があったとしたら、ワクチンの優先接種よりはるかに問題だ。ワクチンは接種を受けた個人の利益だけでなく、社会全体の利益につながるし、順番の後先が即、命の選別につながるという話ではない。しかし、いまの大阪の状況でもし権力者の入院を優先していたとしたら、確実に誰かの健康に被害を与えたことになる。

にもかかわらず、吉村知事は自分の党の議員に持ち上がったこの疑惑を知らんぷりし、他の自治体のワクチン接種に対して偉そうに「後から発覚すれば、権力を使った不正のように思われる」などと説教を垂れているのだ。

しかし、この不誠実さは在阪マスコミも同様だ。前述したように、中谷府議の「感染判明後即入院」問題は、本サイトの報道以前からSNSで広がっており、本サイトの取材に大阪府が認めたことで、さらに非難の声が高まっていた。

ところが、テレビも新聞も、マスコミ系のニュースサイトも、この問題に一切触れていない。吉村知事や松井市長の定例会見でも、この問題に関する質問は出ていない。

今年1月、自民党の石原伸晃・衆院議員が感染して即、東京医科歯科大附属病院に入院したときは、ネットだけでなく、テレビのワイドショーでも取り上げられた。

ところが、さらに医療が逼迫した状況にある大阪でこういう事実が明らかになったのに、在阪マスコミは完全にスルーしているのだ。

いったいなぜなのか。もちろんこれは、維新政治のせいで医療崩壊が起きているこの状況になってもまだ、ほとんどの新聞・テレビが維新に支配され、応援団と化したままだからだ。そして残りのメディアも、維新に怯えて、よほどのことがないかぎり、維新批判を報道できない状態は変わっていない。

実際、5月11・12日には、在阪テレビ局の毎日放送(MBS)の取材に対し、大阪市の保健師が同市の疫学調査の人手不足や過重労働、経験不足の人間が投入されていることなどを告発。合わせて人員体制図をもとに、疫学調査を担当する常勤職員が42人から31人に減らされたと報道した。

ところが、松井市長は12日の新型コロナワクチン接種推進本部会議後の質疑応答でこの問題を質問した記者に対して、指差しながら「それ事実やな? 減ってるっていうのは。MBS」「お前、裏とってきたんやな?」と完全な輩口調で凄んでみせた。

13日の定例会見では、人員表がそうなっていても実際には応援を投入していると言い張り、「なんでそんな不安をあおるようなことばっかり、MBS、何が面白いの? 」「表面的な部分しかとらえず、公共の電波を使って不安をあおっている。これについては会社からの回答を求めます。現場の対応とまったく違うことを君らは放送している」と露骨に恫喝をかけた。

これだけの証言と物証があれば、質問・報道をするのは当然なのだが、こうした維新的な恫喝によって、大阪のメディアは完全に黙らされているのだ。

しかし、それが維新議員たちのやりたい放題の不祥事を生み、コロナ禍の失政を許し、いまも大阪府民の生命を奪い続けている。マスコミはもう少しそのことを自覚すべきではないのか。
(編集部)