【大学野球】最速に遠く及ばない直球「原因が…」 ドラ1候補・筑波大151キロ左腕の苦悩

筑波大・佐藤隼輔【写真:川村虎大】

「腕は振れているのに…」本来の調子とは程遠かった

晴天の等々力球場のマウンドで、ひとり苦しい表情を浮かべた。15日の首都大学1部・春季リーグ戦。筑波大のドラフト1位候補左腕・佐藤隼輔投手(4年)は、3勝同士の東海大戦で先発を任されたが、9安打を浴びて5失点。チームは3-9で敗れ、優勝が遠ざかった。

「自分でも原因がわかっていない」

その表情は悔しさというより、困惑しているように見える。単なる試合でないのは分かっていた。両チーム3勝3敗で、勝てば首位を走る桜美林大が見える位置にくる。しかし、負ければ入れ替え戦の可能性も出てくる。川村卓監督から満を持して託されたマウンドだった。

初回先頭に四球を与えると、2番・鯨井に一塁頭上を越える適時二塁打を打たれ、1アウトを奪う前に先制点を献上した。2回にも1点を失うと、5、6回にも連打を浴び、6回9安打5失点でマウンドを降りた。

球は浮つき、本来の姿とは程遠かったように見えたが、不調という感覚はなかった。「2日前ブルペンに入った時は、調子が良かった。きょうも腕は振れていたんですが……」。2019年に大学日本代表で151キロを計測した左腕から放たれるスピードは、140キロ前後に留まった。

仙台高でエースとして活躍し、筑波大に進学。1年秋から5試合に登板し、25イニング連続無失点と最高のスタートを切った。最速151キロの直球と、スライダー、チェンジアップを武器に打者を翻弄。2年春以外は全て防御率0点台を叩き出した。侍ジャパン大学代表にも選ばれ、大学ナンバーワン左腕との呼び声も高い。ドラフト1位の有力候補にとって、集大成の最終学年となる。

川村監督は「もう1度調整しなくてはいけない」と、佐藤隼の復調を促す。入れ替え戦を避けるためには、不可欠な存在であるのは間違いない。「結果出せなかったんで、切り替えて頑張ります」と、悩める左腕は口数少なく会見場を後にした。(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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