引退後に金なし、うつ病、ドラッグ、離婚…元リヴァプール選手の激白が重い

スポーツ選手が引退した後のセカンドキャリアをどう歩むのかは日本でも問題になっている。

そうしたなか、かつてリヴァプールやトッテナムでプレーした元イングランド代表MFダニー・マーフィーの告白が話題になっている。

『Daily Mail』で、引退後に人生が崩壊状態に陥ったと明かしたのだ。その内容をざっとまとめてみる。

ダニー・マーフィー(元イングランド代表MF)

「ほとんど選手が自分のキャリアは永遠に続くと思っている。

自分もそのひとりだったし、サッカー引退後の人生がどんなものか一切考えなかった。

本当に怖かったからだ。5歳から30歳中盤まで絶えずやってきたものをどう置き換えるのか?

不運にも自分はつらい経験をした。

2013年に引退した後、数年は楽しかったよ。ゴルフをしたり、メディアの仕事をしたり、家族と休日を過ごしたりね。だが、その後に起きた出来事で大打撃を受けた。

もう2度とサッカーをプレーしないことに気付いたことと、貯金のほとんどを失ったことでうつ病に苦しむようになった。当時はそれを否定していたけれどね。

12か月も続いた暗黒の日々の間、飲酒、ドラッグ、ギャンブルにハマった。結婚生活は崩壊し、兄弟や友人とも仲違いして、孤立してしまったんだ。

専門的な治療と愛する人達が助けてくれるまで恐ろしい状況にあった。

自分はまだいいほうだ、長年苦しんでいる多くの引退した選手を知っているし、自殺を考えた人もいる。

自分の苦しみを打ち明けるのがこれが初めてさ。キャリアの岐路に立っている次の世代の選手たちに役だってくれることを願う。

引退による最悪の落とし穴に落ちるのをひとりでも止めることができれば、その価値はある。

自分は他人に助けを求めるのは弱いことだと思って人生を過ごしてきた。3人の兄とともに『泣くな』という文化のなかで育った。

サッカー選手というのは大きなエゴを持っているものだ。

自分の弱い気持ちを受け入れたくなかったが、今の私は自力でやるよりも(救いを)求める方が実際には強いことに気付いた。

シームレスに引退するサッカー選手もいる。彼らは計画を立てていた人たちだ。大部分は私のように非常に難しい。

(引退後の)移行がなぜこんなにも難しいのか?」

「全ての要素が全ての選手に当てはまるわけではないが、経済面などいくつか共通するものがある。

私の説明はプレミアリーグの選手たちは一生身を立てられると思っている人達を少し驚かせるかもしれない。

最初の違いは単純明快だ。身体能力の低下さ。

サッカー選手として、毎日体がドーパミンとエンドルフィンを放出している。この2つは幸福な状態にあるために素晴らしい仕事をする。

エンドルフィンはエネルギーを与え続ける。ドーパミンは幸福な陶酔感をもたらしてくれる、ゴールを決めたり、ファンたちが名前を歌ってくれたりする時にね。

週に3回ジムに行ったとしても、そのドーパミンを補うことはできない。それがないとダルさとのろさを感じたままになる。

現役時代にはピッチ外でのおそろしい出来事もある。自分はスパーズ時代に父を亡くした。

予想していた通り、おそろしいことだった。だが、無情に聞こえるかもしれないが、ビッグマッチが間近に迫っていて、多くのファンたちが頼りにしている時はそれを脇にどけておける。

自分は父が亡くなった2日後に練習に戻った。ちゃんと悲しくなったのは引退した後のことだった。そういうことは心理的な影響を遅らせる可能性がある。

引退はセーフティネットと社会的地位をも奪う。

リヴァプールやスパーズ、代表選手になれば、助けてくれる大勢の人がいる。

家族の具合が悪いなら、クラブがドクターを派遣してくれる。コンサートのチケットも代理人が用意してくれる。

引退した時、一般の大人よりも日常生活への準備ができていないことになる。甘やかされてぬるま湯に浸かった生活をしてきたからね。

サッカー選手はスケジュールが組まれている。練習時間、試合の時間、着る物、食べる物。

(引退後に)朝突然起きて、モチベーションになるものでスケジュールを満たすのは大変だ。

サッカーを2度とプレーせずに他の問題に対処しなければいけないことに完全に落ち込んでしまった。そして、充実感を探した自分は間違ったやり方に逃げた」

「飲酒とギャンブルにのめり込み、ドラッグにも手を出した。

今はうつ病だったことが分かる。でも、当時は分からなかったし、分かりたくなかったのかもしれない。

その代わりに酷く苦しんだ。母が癌になったが、自分には彼女を適切にサポートする強さも理解力もなかった。

若い現役時代に元プロ選手が問題を抱えると聞いても『しっかりしろよ』と思ったものだ。裕福でうつ病になるとは思っていなかった。

でも、自分が引退して、そんなに単純ではないことが分かった。

さらにプレッシャーを加える別の問題もあった、経済面さ。

あまり公表されていないプレミアリーグのスキャンダルは経済的な虐待だ。

選手は元気な間は高額な給与を得ているが、引退後に自分の投資を見てみるとなくなっている。

普通サッカー選手は財政的な問題についての経験や知識がほとんどない労働者階級の人間だ。

もちろん、まともなフィナンシャルアドバイザーもいる。だが、サッカー選手は他人は貪欲で利己的なことに知ることになる。

一部の海外への不動産投資はひどいものだった。私は多くの選手と同じように巻き込まれ、それは訴訟や警察沙汰になった。

私は残りの人生の貯蓄をするために短いサッカー人生でハードワークをした。だが、そのほとんどはなくなってしまった。

それはメンタルや肉体的な問題、試合で受けていた賞賛の消失に加えて、さらなる犠牲になった。

元プレミアリーグ選手の友人が多くいる。彼らは破産して長い間うつ病を患っている。

だが、自分はポジティブな姿勢で締めくくりたい。私は反対に行くことができるという例だ。

ターニングポイントは自分が経験したことを友人や家族に打ち明けることだった。

人生で最も大変だったのは、愛する人と並んで座り、自分がどこにいたかを率直に打ち明けることだった。

でも、それはカタルシス的な経験になった。かつて彼らのことを失望させたことは知っていたが、一度打ち明けると彼らはこちらの状況を理解してくれる。

彼らが気にかけてくれるのが分かるのは素晴らしい気持ちさ。

自分は専門的なセラピーを受け入れた、それが回復のスタートだった。

子供たちとは素晴らしい関係にあるし、素晴らしいパートナーもいるし、兄弟とも仲直りした。最悪の時期には1年以上も話していなかったけどね。

セラピーは自分を責めることを止めさせ、その理由を分析し始めるものだ。

自分や多くの世代を悩ませた落とし穴に今の選手たちが落ちるのを回避できることを願う。

厳しい現実は、引退したらクラブは(その選手を)あまり気にかけなくなることだ。

もはや資産ではなくなるので、自分で責任を持ってトライしなければいけない」

【動画】これがマーフィー!リヴァプールで決めた超ゴール5連発

海外のファンたちは「引退後に父親の死が悲しくなったというのは興味深い話」、「今の彼がよくなったと聞けたのはよかった」などと反応している。

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