テレワーク、感染者数多い都市部ほど 会社指示で中断も

 在宅勤務などテレワークを経験した人は都市部ほど多い─。国が実施した2020年度実態調査で、そんな傾向が明らかになった。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに経験した人が多く、前年度比8.2ポイント増の23.0%。コロナ禍を背景に少しずつ浸透している一方、会社の指示で中断するケースもあった。専門家は「出社か在宅かの二者択一ではない。テレワークは働き方改革の一つの手段」と指摘している。

 調査は国土交通省などが昨年11月に実施。会社員や公務員ら3万5727人のうち、8205人がテレワークをしたと回答した。男性は29.3%、女性は15.5%だった。

 居住地別では、どの地域も前年度を上回ったが、首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)は34.1%で前年度比15.3ポイント増と大幅に上昇。近畿(23.3%)、中京(19.7%)と続き、それ以外の地方都市圏は16.2%だった。感染者数の多い都市部ほど導入が進んでいる傾向が浮かんだ。

 テレワークを経験した人の約6割が緊急事態宣言が発令された昨年4月以降に始め、通勤時間が長い人ほど実施した割合が高かった。「勤務先で制度が導入されている」と答えた人も前年度から大きく増えた。

 さらに、経験した人の一部に追加調査した結果、実施率は宣言解除後に減少。中断した理由には「会社から出勤するよう指示があった」が最も多かった。実施してよかった点では73.8%が「通勤の負担が軽減された」とし、悪かった点には46.7%が「コミュニケーションや業務効率の低下など勤務状況が厳しくなった」ことを挙げた。

 日本テレワーク協会の田宮一夫専務理事は「コロナによって認知度が高まり、導入する企業が一気に増えた」と指摘。テレワークは働き方改革の手段の一つとし、労働力人口が減少する「社会」、優秀な人材確保や生産性向上を目指す「企業」、ワーク・ライフ・バランスを求める「就業者」の3者にプラス効果をもたらすものと位置付ける。

 効果的に運用するためのポイントは何か。田宮氏は「生産性を上げるために、どこでどういう仕事をするかは社員一人一人の判断に任せることが重要。もし、うまくいかない時はいったん中断して、テレワークの環境づくりから始めてみるもいい」とアドバイスする。

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