阪神に競り負け…「キャプテン坂本不在」がG投にも深刻な影響

3回、1塁へ悪送球しうつむく吉川

巨人が16日の阪神戦(東京ドーム)に5―6で競り負け、首位・阪神とのゲーム差は4・5に広がった。長嶋茂雄終身名誉監督(85)も見守った「伝統の一戦」の裏では、右手親指骨折で離脱中のキャプテン坂本勇人内野手(32)の存在の大きさが改めて浮き彫りとなった。

猛虎打線を相手に投手陣が粘れず4回で6失点。原監督は「6点がね、やや重かったかな」と振り返ると、4回に2番手で4失点を喫したドラ1・平内に「今日は寝られないぐらい悔しがらないと」と二軍再調整を命じた。

その一方で指揮官が指摘したのが離脱中の坂本に代わり「7番・遊撃」で出場した吉川の拙守。3回二死一塁でマルテの当たりを一塁悪送球。スモークが後ろにそらし適時失策となった。

4回にも吉川は俊足・中野の打球で前に突っ込めず内野安打とされ、2失点につながった。6回の守備から交代した吉川に原監督は「もうちょっと攻撃性がほしいね。ワンバウンドで投げようとしているのか、投げまいとしているのか、というのがなかなか見えづらい」と苦言。元木ヘッドも「そんな甘くないよっていうこと。『代わりはいっぱいいるからね』っていうことも、選手の気持ちの中でやってもらわないと困るよね」と厳しかった。

これで坂本不在の5戦は2勝2敗1分けと五分の成績。強打と堅守を誇る主将の離脱で攻撃力と守備力の低下は想定されていたが、無視できないのが投手への影響だという。ライバル球団関係者は「坂本の離脱後、四球を出した直後やピンチの時、内野陣による投手への声かけが明らかに減っている」と指摘する。

実際、巨人投手陣は5戦で18失点。1試合平均3・6失点とチーム防御率3・25を上回っている。坂本は「それほど意味のある会話はしていない」としながらも、間が必要と判断すればマウンドの近くまで行き、投手に声をかけてきた。これまで数多くの試合で投手が立ち直る、ひとつのキッカケとなった。

だが主将離脱後は桑田投手チーフコーチ補佐が出ると内野陣も集まるものの、会話は桑田コーチが主導。内野陣は見守るだけで輪が解けるケースが多かった。この日の4回、先頭打者に四球を与えた平内にようやく二塁・若林が声をかけたものの、直後に陽川に2ランを被弾した。

若い内野陣からすれば、声かけで投手のリズムや集中を乱したくないのはもちろん、NPBが近年、推進する試合時間短縮の方針もある。絶妙なタイミングでの素早い声かけは、長年の経験がある坂本だからこそできる技とも言える。

「攻撃面においても相手投手の球筋や球威を分析して丸に伝えるなど、これまで坂本が果たしてきた役割は大きい」と前出の関係者。その坂本はジャイアンツ球場で左手だけでティー打撃を行うなど練習を再開している。

この日、観戦した長嶋氏は「今年の阪神はルーキーの佐藤輝君という新しい力もあり、強い」と球団を通してコメントした。虎を追う原巨人にとってキャプテンの一日でも早い復帰が待たれる。

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