注目集まるデジタル資産「NFT」って何?国内注目企業もピックアップ

NFTという言葉が今年に入り注目を集めています。NFTとは、Non-Fungible Tokenの頭文字をとったもので、直訳すると代替不可能なトークン。つまり、所有権が明確となっている、唯一無二なデジタルデータのことです。

アメリカ時間3月11日、比較的無名だったデジタルアーティストによるNFTデジタルアートのコラージュが6,930万ドル(約75億円)で落札されました。NFT作品としては、過去最高の落札額でした。

また、アメリカ時間3月22日には、ツイッター社の共同創設者でCEOを務めるジャック・ドーシー氏による「初ツイート」のNFTが291万ドル(約3億)で落札されました。このNFTの落札者は、「数年後に、この初ツイートに絵画の「モナ・リザ」と同じくらいの価値があることに気づくでしょう」とツイートしており、NFTの資産性も注目されているようです。

このような高額な落札が続いていることで、一気にNFTが注目度を高めているのです。


NFTではブロックチェーン技術を活用

NFTは、分散台帳システムであるブロックチェーン技術を活用しています。そのため、暗号化されていることに加えて、優れた改ざん耐性を持つ仕組みから購入者の所有権が強固に保護される仕組みです。

転売する際もブロックチェーン上に履歴が残ることから、透明性がある取引ができる上に、所有しているNFTが本物であることが証明できます。また、中央集権型ではないことから、盗難や没収される可能性も低いでしょう。

一般的には、コレクション性を維持するために単一の商品、もしくは限られた数量のみが提供されています。真正性・安全性・希少性の観点から、優れた資産性を持つ商品になる可能性があるようです。

既存の資産、例えば現金や金、宝石は歴史的に紛失や略奪、没収される危険性があります。絵画やワインであれば破損や劣化の心配もあるでしょう。ビットコインなどの暗号資産と違い、数日で価値が大きく価値が変動しないという利点も挙げられます。

そのため、富裕層にとっては、新たな資産性を持つ商品となる可能性があるようです。既に、クリエイターの初期作品を青田買いする需要や、コレクション性や希少性の高さを見込んで買うといった、現実世界で行われていることがデジタルデータであるNFTでも起きています。

デジタルデータの革命となる可能性

NFTは、デジタルデータの革命になると言われています。今までのデジタルデータは、コピーが無限にできるため、無価値もしくは一定の価値しか生み出すことができませんでした。

しかし、デジタルデータとして提供されるNFTとなると、新規に提供される際には、コレクション性や購入者の価値観に基づいた価値で取引されることになります。それだけでなく、NFTマーケットプレイスで売買される二次流通時に、マーケットの運営者に加えて著作権者にも手数料という形で収益を生み出すことが可能となるようです。

著作権者やコンテンツホルダーなどの生産者の観点から見ると、収益が拡大するでしょう。クリエイターを応援するファンなどの消費者側では、一次・二次流通を問わずにNFTを買うことが、クリエイターを応援することにつながります。もちろん、マーケットプレイスを運営する仲介者も収益を得られるでしょう。

生産者・消費者・仲介者、この3者すべてが収益や利得を得られる仕組みとなっていることから、今後参入や導入が速いスピードで進んでいくと見ています。

現在のNFTは成長期、注意が必要

現在のNFTには注意も必要です。バブルともいわれる高値で売買されていることや、クリエイターやコンテンツホルダーの不祥事、デジタルならではのコピー流出によるコレクション性の低下といったリスクがあることは否めません。

また、NFTの価値を保護するための法整備もまだ未整備です。このようなリスクはありますが、デジタルデータとして新たに資産性を持つ商品になるであろうNFTに、注目していきたいと考えています。

日本国内でNFTに関連する企業は?

NFTに関連する企業とは、どんな企業でしょうか。先行しているアメリカでは、ゲームのキャラクターやアイテム。そして、NBAやMLBの有名選手を使ったトレーディングカードなどが好調に推移しています。

日本での先行事例では、スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684・東証1部)やカプコン(9697・東証1部)がいち早く取り入れています。出版業界でも、電子書籍に強いメディアドゥ(3678・東証1部)が、大手4出版社と連携してデジタル付録をNFTにて年内に提供を開始する予定です。日本は、漫画・アニメ・ゲームなど、数多くのIP(知的財産)を持っていることから、今後参入や導入がなされていくと見ています。

NFTを売買する市場であるマーケットプレイスに関係する企業にも注目しています。例えば、メルカリ(4385・東証マザーズ)では、新会社メルコインにてNFTの取引に対応する予定です。マネックスグループ(8698・東証1部)は、マーケットプレイス「CoinCheck NFT(β版)」を開始しました。GMOインターネット(9449・東証1部)では、NFTマーケットプレイス「アダム by GMO」を開始予定と、続々と参入を開始している状況です。

投資や提携などにより参入する企業も多いようです。gumi(3903・東証1部)は、世界最大のNFTマーケットプレイス「Opensea」やNFT・ブロックチェーンゲーム専業開発会社であるdobule jump.tokyoなどに出資しています。Link-U(4446・東証1部)は、共同子会社であるハッシュパレットを通じてエンターテイメント領域に特化したブロックチェーンネットワーク「パレット(Palette)」のテストネットの運用を開始しています。

今後もNFTに様々な形で参入・導入する企業は増えて盛り上がっていくと見ていますので、継続して注目していきたいところです。

<文:投資調査部 饗場大介>

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