“外れ1位”で5球団競合から5年… ロッテ佐々木千隼に見える成長と変化

ロッテ・佐々木千隼【写真:荒川祐史】

今季は中継ぎとしてチームに貢献し、すでに3勝をマークしている

ドラフトでの5球団競合を経てプロ入りした大器が、相次ぐ故障を乗り越え、ついに開花の時を迎えつつある。ロッテの佐々木千隼投手が、開幕からリリーフとして好投を続けている。ビハインドの場面できっちりと抑えて逆転への流れを呼び込むケースも多く、中継ぎ投手という役割ながら、5月5日の時点で既に3勝を記録している。

4月25日のソフトバンク戦では9回表に3点差に迫られ、なお1死1、2塁というピンチでマウンドに。本塁打を打たれたら、一気に同点という状況で、佐々木千は真砂勇介を一飛、今宮健太を見逃し三振に打ち取る完璧なリリーフを見せて試合を締めくくり、見事にプロ初セーブを記録した。

プロ入りからの4年間は故障もあって苦しいシーズンが続いていたが、今季は投球内容や指標の面でも進化が見られる。今回は、佐々木千のこれまでの経歴、そして、先発時代と現在のピッチングスタイルがどう変化しているのかという点を、各種の指標から紹介していきたい。(※成績は5月5日現在)

ロッテ・佐々木千隼の年度別成績【画像:パーソル パ・リーグTV】

佐々木千隼はいわゆる「外れ1位」として史上最多となる5球団での競合を経て、桜美林大から2016年のドラフト1位でロッテに入団。1年目は序盤からローテ入りを果たし、4月6日にはプロ初先発初勝利を記録したが、5月の月間防御率6.65、6月の月間防御率7.08、7月の月間防御率5.06とその後は崩れ、2軍での再調整を余儀なくされた。

中継ぎとして開幕1軍入りを果たした今季はプロ初セーブもマーク

2軍での調整を経て9月に再昇格して以降は、4試合で防御率1.04と抜群の投球を披露し、翌年以降の活躍に期待を持たせた。しかし、プロ2年目の2018年は故障の影響により、一度も1軍で登板することはできず。故障の癒えた2019年は7月以降に6試合に先発登板し、防御率2.70と好投。リリーフとして登板した1試合でも2イニングを無失点に抑え、故障からの復調を印象付けた。

だが、2020年は再び故障に苦しみ、1軍では防御率8点台と打ち込まれた。2軍でも8試合で防御率4.15と安定感を欠いた。巻き返しを期した2021年は中継ぎとして開幕1軍入りを果たし、4月1日に3回1失点、4月8日に3回無失点と、ロングリリーフとして安定した投球を披露。その後は1イニングを任される役割にシフトし、4月25日にプロ初セーブを挙げた。

ここからは、各種の指標をもとに、今シーズンの佐々木千のピッチングはどこが変化しているのかを見ていきたい。

ロッテ・佐々木千隼の年度各種指標【画像:パーソル パ・リーグTV】

通算奪三振率は6.33と高い数字ではなく、プロ入り後は打たせて取るタイプのピッチングを主体としている。今季の奪三振率はキャリアで最も低い数字となっており、投球内容の変化こそあれど、ピッチングスタイル自体は大きく変化していないことがうかがえる。

与四球率と被本塁打率で大きな変化が

一方で、与四球率と被本塁打率の面ではかなりの変化が見られる。この2つの指標はキャリアを通じてやや悪い傾向にあり、双方の数字に改善が見られた2019年は投球自体も安定していた。四球と被本塁打の割合は、佐々木千の投球内容そのものに影響を及ぼす要素で、打たせて取る投球をスタイルとする以上は、無条件で走者を溜める四球と、走者を全て返される被本塁打が、いずれも失点数に直結するのは自然なことだ。

2021年は10.2回を投げた時点で四球がわずかに2つ、与四球率1.69と改善を見せている。同様の傾向は被本塁打率の面でも見られ、今季は1本も本塁打を許していない。自身のピッチングスタイルに即した投球内容の進化が、今季の佐々木千の安定感を支える理由の1つとなっているのは間違いないだろう。

故障を経てのフォーム変更と速球の威力向上が奏功し、より打者にとって打ちづらい投手へと進化。それに加えて、与四球と被本塁打の確率も大きく減少し、昨季までの失点パターンにつながる要素も少なくなりつつある。今季の佐々木千が安定感のある投球を続けていることには、それ相応の理由が存在している。

新境地を開拓した右腕はこのままリリーフ陣の一角として好投を続け、チームにさらなる勝ち星を呼び込んでいくことができるか。プロ入りから5年。紆余曲折を経てついに覚醒の時を迎えつつある佐々木千隼のブルペンにおける重要性が、今後さらに増してくる可能性は十二分にありそうだ。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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