村上春樹作品の装画も…「安西水丸」展、多くの人に愛されたイラストレーション

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果物や貝殻、スノードーム、それにウイスキーのボトル。安西さんが描いた数多くのモチーフは、心がふっと緩むような懐かしさをまとう。

「生活の中で愛用していたり、コレクションしていたりするお気に入りを描いているんですね。身の回りのものをモチーフとして使う自然体なところが、心地よさとして伝わってくるのではないでしょうか」

と世田谷文学館学芸員の宮崎京子さん。「シンプルな線に味わいがある。観ていて飽きないし、もっと他のものも観たくなる、知りたくなる絵なのかもしれません」

本展では初公開となる作品をはじめ、少年時代からの約600点にのぼる原画や資料が展示される。

「展示室の壁にスノードームなどの特大モチーフが描かれていたり、顔はめパネルがあったり、イラストレーションの世界に入り込んでしまったような空間になっています」

全コーナー、写真撮影OKだから、思い思いの楽しみ方ができそう。

また嵐山光三郎、村上春樹、和田誠、3人の作家との仕事に注目した展示も見どころ。なかでも’80年代初めから安西さんが亡くなるまで、数多くの挿絵、装画を手掛けた村上氏とのタッグは伝説的。偶然、ウイスキーの「カティーサーク」を題材に各々詩と絵を描いていたエピソードもあるというから驚きだ。観覧後はTシャツやマグカップなどオリジナルグッズの販売もお見逃しなく。

印象深い装丁の数々。

水平線をバックに、洋梨をのせたプレートが浮かんでいるようにも。春樹ファンにとって、安西さんの装画と村上作品は切っても切れない関係が。

村上春樹『中国行きのスロウ・ボート』装丁 中央公論社 1983年

フレンドシップ&ワークス。

憧れの先輩イラストレーター・和田誠さんとの共作には微笑ましい空気感が。最初に和田さんがリンゴの断面を描き、返歌として安西さんが皮付きを描いたそう。

《APPLE》2001年 和田誠共作 illustrated by Mizumaru Anzai ©Masumi Kishida ©Wada Makoto

一本の水平線に込めた少年の日の思い出。

自ら「ホリゾン」と呼んだ横線は、少年時代を過ごした千葉県・千倉の海が原点に。「紙にホリゾンを引くときは千倉の水平線が目に浮かぶのです」(安西さん)

「カティーサーク自身のための広告」村上春樹共著『象工場のハッピーエンド』illustrated by Mizumaru Anzai ©Masumi Kishida

illustrated by Mizumaru Anzai ©Masumi Kishida

『イラストレーター 安西水丸展』 世田谷文学館 2F展示室 東京都世田谷区南烏山1‐10‐10 開催中~8月31日(火)10時~18時(入場は17時半まで) 月曜(5/3、8/9は開館)、5/6、8/10休 一般900円ほか TEL:03・5374・9111

あんざい・みずまる(1942‐2014) 東京都出身。広告代理店、出版社勤務を経てイラストレーターに。

※『anan』2021年5月19日号より。取材、文・松本あかね

(by anan編集部)