<社説>ウイグル人権問題 国連の立ち入り認めよ

 中国の新疆ウイグル自治区の人権問題について国際社会から非難が相次いでいる。 中国は人権弾圧を否定し、内政干渉だと反発している。しかし、中国は国連人権理事会の理事国である。人権擁護で「最高水準の規範」が求められる。

 実態把握のため国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の自由な立ち入り調査を認めるべきだ。

 米国は2020年版の人権報告書で「ウイグル族らに対するジェノサイド(民族大量虐殺)や人道に対する犯罪が続いた」と指摘。100万人以上のウイグル族らが強制収容され、不妊手術や強制労働を強いられているとしたほか、さらに「他の200万人が『再教育』訓練を受けた」と報告した。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は先月、中国政府による新疆ウイグル自治区の少数民族ウイグル族らへの弾圧を「人道に対する罪」だと非難し、国連人権理事会に対して調査委員会の立ち上げを求める報告書を発表した。弾圧規模について「近年で前例のないレベルに達している」と指摘する。

 先進7カ国(G7)のうち日本を除く6カ国は中国当局者らへの制裁を発動した。中国は激しく反発し、対抗措置としてEU関係者らへの制裁を発表した。制裁が効力を発揮するかどうか不透明だ。

 日本は他のG7各国と一線を画している。政府筋は「日本は相手との対話を通じて人権状況の改善を促してきた。欧米流の人権感覚を背景に、何かあれば制裁を持ち出す外交はできない」という立場だ。それなら問題解決に向け、独自の外交努力が求められる。

 世界の経済大国として中国自身が果たさなければならない責任がある。

 11年に人権の保護・尊重に対する国と企業の責任を定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」が国連人権理事会で全会一致で承認された。国連人権理事会の理事国である中国は、責任ある国家として、欧米から指摘される自国の人権問題としっかり向き合わなければならない。

 企業にとっても中国の人権問題は避けて通れない。近年は環境問題、人権、企業統治を重視する「責任投資原則」(PRI)が広がっている。

 オーストラリア戦略政策研究所は昨年、世界の有力企業80社超がウイグル族を強制労働させた疑いがある中国の工場と取引していたと指摘。日本企業計14社の名前が挙がっている。

 中国は世界最大の市場である。20年度の日本の対中輸出額は前年度比9.6%増の15兆8997億円となり、過去最大を更新した。日本は中国への依存を深めている。

 しかし、目先の利益を優先して中国の人権問題に目をつぶることは許されないだろう。ウイグル問題で日本を含む世界の企業の責任投資の理念が問われる。

© 株式会社琉球新報社