「ナースがワクチン接種で死亡」 フェイスブックでデマ 社会不安背景にうわさ拡散か

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男性のフェイスブックに書き込まれた「ナースがワクチン接種で亡くなった」とのメッセージ(写真の一部は加工しています)

 「○○病院のナースがワクチン接種で亡くなったそうです。シークレット㊙事項」。熊本市の60代男性は、自身のフェイスブックに書き込まれた、新型コロナウイルスに関する真偽不明のメッセージに不安を感じ、熊日の「SNSこちら編集局」(S編)に情報を寄せた。取材の結論からいえば、事実ではなかったが、デマの源流や背景を探った。

 男性への書き込みには、熊本市中央区の総合病院名が具体的に書かれている。正確な名称でないが、どこか容易に連想できる。男性は近く1回目のワクチン接種を予定しており、接種が怖くなったという。

 取材班がその病院に確認すると、「事実ではない。職員向けの接種を進めているが、重い副反応も起きていない」と否定。外部からも問い合わせがあり、「心当たりすらなく、どうしてそういう情報が流れるのか分からない」と困惑する。

 男性のフェイスブックに書き込んだのは知人女性。別の知人も「全国でもナースが何人かしれっと亡くなってますよね…公表しないところに闇を感じます」とコメントを加えた。

 書き込んだ女性に取材すると、「知人から聞いた話。看護師が接種後に体調を崩したという話も聞いており、あり得ない話じゃないと思った」と話す。さらに女性に教えた知人をたどったが、「取材はお断りします」と言われ、それ以上さかのぼれなかった。

 ワクチン接種に伴う副反応は、予防接種法に基づき、医療機関や製造販売業者は国に報告義務がある。厚生労働省が12日に公表したワクチン接種後に死亡した事例は累計39人。いずれもワクチンとの因果関係は情報不足で評価できないなどとされている上、都道府県名などは一般には公表されていない。

 県薬務衛生課も「全国的に副反応の報告件数が増える中、国の個別評価結果と県内の報告事例をすべて対照しきれておらず、県から事例公表することは難しい。仮に死亡事例の報告があっても、因果関係が分かるまでの時差もある」と言う。

 県サイバーセキュリティ推進協議会長を務める熊本学園大の堤豊教授(情報科学)は「社会的不安があると、半信半疑でも善かれと思って、うわさ話が広がりやすい。あいまいな情報が人づてに脚色され確定的になっていく」と分析。その上で「社会不安を払拭するためには、行政からの迅速な情報提供が信頼されることが重要だ」と話した。(岩下勉、内田裕之、内海正樹)