なでしこ・岩渕が契約満了でアストンビラ退団 東京五輪後はアーセナル移籍が有力

アストンビラで確かな爪痕を残した岩渕(ロイター)

なでしこジャパンのエースでイングランド女子スーパーリーグ、アストンビラのFW岩渕真奈(28)が18日、6月末に契約満了で退団することになった。昨年12月にINAC神戸から加入し、リーグ戦13試合に出場して2得点。12チーム中10位で2部降格を免れたシーズンでの収穫は今までにないものだった。

移籍直後は4試合で2得点、1アシストの活躍。上位進出への期待が膨らんだが、戦力的に劣るチーム事情もあって終盤戦は残留のために守備的戦術にシフトしたこともあり「正直、もどかしさしかなかった」と悩みを重ねる日々が続いた。

それでも155センチの小さなエースは、過去の苦悩とは違う充実感すら漂わせていた。海外でプレーするのはこれが3チーム目。2012年に日テレから当時ドイツ2部だったホッフェンハイムに移籍し、14年からはバイエルン・ミュンヘンでプレーした。5シーズンで54試合に出場し、15得点。物足りない数字とともに感じていたのは「フィジカルの差」だった。

17年にINAC神戸に移籍して日本復帰を果たした際、本紙の取材にこんな話をしていた。

「ドイツでは当たり負けしないように体をつくったんです。シーズン開幕前にヒザのケガをしたのは、筋力が足りないからだと思って。でも、そうしたら自分がイメージするような動きができなくなってしまって…」

パワーサッカーにパワーで対抗しようとした結果、不本意な体重増。そのほとんどが筋肉だったという。これで岩渕の持ち味のスピードや細かい動きは失われた。日本復帰後は以前の体に戻し、再び納得のいくパフォーマンスができるようになった。だからこそ、今回のイングランド移籍では「自分のスタイルにこだわる」というテーマを掲げた。

なかなか得点に絡めない時期でも、日本にいるなでしこジャパンOGとは連絡をとり、やりがいのある毎日を過ごしている様子を伝えていた。それは強がりではなく、自分のスタイルで通用するプレーが増えたことへの自信の表れだった。

それでも、個の打開力が足りないことは痛感している。なでしこジャパンでW杯制覇できたのはチームとしての連動など、高い組織力のおかげだったが、欧州では自分を生かしてくれるような周囲の選手、プレーは少ない。アストンビラでの戦いは終わったが、東京五輪後は強豪アーセナルでのプレーの可能性が報じられている。「まだやり残したことがある」という言葉には〝リトル・マナ〟の強い意思が感じられる。

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