【東京五輪】ワクチン接種は時間切れ! 開催への最終手段「福井モデル」とは

医学教授が示す五輪開催の最終手段は…

最終手段は〝日本版ロックダウン〟だ! 新型コロナウイルス禍で1年延期となった東京五輪の開幕まで残り約2か月。日本政府は緊急事態宣言を発令し、まん延防止等重点措置を要請しているが、コロナが終息するメドは立っていない。全国各地で東京五輪の開催を危ぶむ声が相次ぐ中、感染症に詳しい福井大学医学部の岩崎博道教授(61)が本紙に緊急提言。「安心・安全」な大会運営を目指すなら、これまで以上に大胆な政策が必要不可欠だという。

緊急事態宣言下でも東京都や大阪府の新規コロナ感染者数は減少する気配はないが、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(67)は19日から3日間の日程で行われるIOC調整委員会の冒頭あいさつで「安心で安全な大会を行うためにフォーカスすべき。我々も一生懸命努力している」。東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長(56)とともに改めて五輪開催を主張した。

そんな状況に岩崎教授は「(安心・安全の)具体案が(国民に)見えてこないだけであればいい。ただ本当に何も考えていないのであれば、ちょっとまずいのではないか」と苦言を呈した。さらに「感染者数が減らないと医療現場も持ちこたえられない。今の状態が五輪まで続いて、選手や関係者から感染者が出たときに、治療をする余力が今の東京の病院にはないのでは」と首をかしげた。

では、どうするべきなのか。岩崎教授は「今週また1日1000人の感染者が出たとなると、緊急事態宣言のさらに一つ上の措置を講じて、人の動きを止めるような政策を打たないと感染者数は減らない。首都圏で例えれば、住民や店舗への補償に十分な資金を投入し『2週間営業を控え、外出を自粛してほしい』というような政策が打てれば、理論上は2週間後には新規の感染者数が大幅に減る」と強調した。

日本の法律で海外のようにロックダウンで都市封鎖を敢行するのは難しい現実もあるが「短期間でいいのでロックダウンに相当するようなことをしないと。五輪まで残り2か月しかないのでもう間に合わない。1か月後ぐらいに絶大な効果が出るような政策を打たないと時間切れ。大会を中止した際に発生する違約金などの莫大な出資を、五輪開催のための事前の予算として、用いるという発想の転換も必要なのではないか」と指摘した。

仮に患者数を減らすことができても、より大事なのがその状態を維持すること。「新規の患者を1日100人以下に抑え、それを続けることが目標になると思う。福井モデルのように都内の患者数をある程度抑え、積極的疫学調査をやって、1人感染者が出たら徹底的に感染経路を調べてPCR検査を実施するという体制を取り戻すことを初心に帰ってやるべき。これができたら大きなクラスターが突然発生することはないと思う。感染経路を追える状態になるまで東京の患者の数を減らす。それで(感染状況を表す)ステージ2(病床使用率20%未満)まで減らすことができれば、五輪を安心・安全に実施することができるのではないか」

開催反対派からは「五輪の開催は人々の命を犠牲にする」との意見も聞かれるが「五輪のためと言っても、患者を減らすということは、医療体制の負担を減らすということ。それは結局、国民や都民の命を守ることにつながる。五輪があるこの時期に徹底した対策をすることで日本国民の命も守れる」との見解だ。

当初期待されていた国民に対するワクチン接種で集団免疫を獲得させ、五輪を開くというプランはもはや時間切れ。日本政府は本当に五輪を開催したいのなら、岩崎教授の提言も含めて一刻も早く新たな策を講じなければならない。

© 株式会社東京スポーツ新聞社