なぜ捕手のサインに7度も首を振ったのか? 最下位DeNAを象徴する“チグハグ”

DeNA・嶺井博希(左)と大貫晋一【写真:荒川祐史】

8球を費やしてカウント3-2…7度首振って投げたスライダー

■中日 5ー1 DeNA(18日・横浜)

リーグ最下位に沈むDeNA。苦しいチーム状態を象徴するかのようだと注目されたのが、18日の中日戦で先発の大貫晋一投手が嶺井博希捕手のサインに7度も首を振ったシーンだ。三浦大輔監督は翌19日、「あえて捕手から“首を振れ”とサインを送るケースもあります。昨日がどちらだったかは言えませんが……」と煙に巻いた。【宮脇広久】

3回1死走者なしで、中日の5番・高橋周平内野手を迎えた場面だった。すでに初回の第1打席で初球のツーシームを左前適時打にされており、大貫にとっては要警戒の打者だった。この打席では速球、ツーシーム、カーブ、スプリット、チェンジアップを駆使するもファウルで粘られ、8球を費やしてカウント3-2。9球目を前に、嶺井から出たサインに7度も首を振った。

たまらず一呼吸を置いた嶺井。仕切り直して出したサインにようやく大貫は頷き、この試合で高橋周に対して初めてスライダーを投じたが、低く外れて四球となった。結局、大貫は4回途中10安打4失点でKOされ、今季4敗目(1勝)を喫した。

翌19日の同カードは雨天中止となり、リモートで報道陣に応じた三浦監督は「首振りのサインもあります」と語った。とはいえ「大貫(の投球)が良くなかったのは確か。試合後にバッテリーで話をしているし、投手コーチやバッテリーコーチとも話しています」とも付け加えた。実際、配球を探る打者を幻惑するために、必要以上に捕手のサインに首を振ってみせるケースはある。しかし大貫の場合は、自らリズムを崩しているようにしか見えなかった。

相棒の捕手も不動の存在がいない状況…44試合で5人を起用

三浦監督は18日の試合後、大貫について「弱気な投球が見えた」と苦言。序盤から失点し、なかなかサインが決まらない大貫の様子がいかにも自信なさげで、逃げに回っているように見えたのではないだろうか――。

相棒となる捕手も不動の存在がいない状況。今季は開幕から44試合で捕手を5人起用している。昨季120試合中71試合でスタメンマスクをかぶりレギュラーの座をつかみかけた戸柱恭孝は、今季29試合(先発20、途中出場9)に出場。今月17日に2軍落ちとなった理由を三浦監督は「再調整」と語り、ケガではない。嶺井は30試合(先発21、途中9)で、22歳の山本祐大が7試合(先発2、途中5)、プロ10年目の高城俊人が2試合(先発1、途中1)となっている。18日に登録されたばかりの伊藤光は、同日の中日戦の5回に代打で登場し、そのまま守備に就いた。

大貫は昨季、開幕直後の2試合を除き19試合中17試合で戸柱とバッテリーを組み、チーム勝ち頭の10勝(6敗)を挙げ、防御率2.53をマークした。ところが今季は8試合1勝4敗、防御率6.75の不振。開幕から続いていた戸柱とのバッテリーも解消し、最近2試合は嶺井と組んでいる。慣れない捕手との間で、呼吸が合わない場面があったとしても無理はなかったかもしれない。「常勝球団には必ず名捕手あり」と言われるほど、重要な扇の要。押しも押されもせぬ正捕手を作ることができれば、チーム強化の近道となるのだろうが……。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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